身体障害者手帳の審査は厳しい?審査基準や取得手順を解説

身体的な障害を持っている人を対象とした身体障害者手帳。障害の内容や重さによって、適切な等級での認定が受けられます。 しかし人によっては、その認定基準が厳しいと感じる場合もあるかもしれません。本記事では、身体障害者手帳の認定基準について、具体的に解説します。
身体障害者手帳とは

身体障害者手帳とは、都道府県や政令指定都市・中核市などの自治体が、身体に障害のある人に交付する手帳で、公的な福祉サービスを受ける際に必要となる証明書です。 対象となるのは、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、内部障害(心臓・腎臓・呼吸器など)といった幅広い身体障害で、障害の程度に応じて、1級(最重度)から6級(最軽度)に区分されます。 手帳を取得すると、医療費助成や税金の控除、公共料金・交通運賃の割引、補装具の給付、障害者雇用枠での就労支援など、さまざまな経済的・社会的支援を受けることができます。 申請には指定医師による診断書が必要で、交付までには通常1〜4ヶ月ほどかかります(自治体や申請内容によって変わります)。手帳は原則として更新の必要がありませんが、障害の状態が変化した場合などには再認定や手続きが求められることがあります。
身体障害者手帳を取得するためには

身体障害者手帳を取得するためには、1級(最重度)から6級(最軽度)のいずれかに該当する障害であると認定される必要があります。 【身体障害者手帳の対象となる障害】
- 肢体不自由(上肢障害)
- 肢体不自由(下肢障害)
- 視覚障害
- 聴覚障害
- 平衡機能障害
- 音声・言語機能障害
- そしゃく機能障害
- 心臓機能障害
- 腎臓機能障害
- 呼吸器機能障害
- ぼうこう又は直腸機能障害
- 小腸機能障害
- 肝臓機能障害
- ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
障害の内容によって、認定基準がそれぞれ設定されています。 代表的な例を以下に示します。 【例1:視覚障害の認定基準】
- 1級:両眼の視力の和が0.01以下のもの
- 2級:両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの
- 3級:両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの
- 4級:両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの
- 5級:両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの
- 6級:一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、 両眼の視力の和が0.2を超えるもの
出典:厚生労働省 【例2:聴覚障害の認定基準】
- 2級:両耳の聴力レベルが100dB以上
- 3級:両耳の聴力レベルが90dB以上
- 4級:①両耳の聴力レベルが80dB以上 ②両耳による普通話声の語音明瞭度が50%以下のもの
- 6級:①両耳の聴力レベルが90dB以上 ②一耳の聴力レベルが90dB以上、他耳の聴力レベルが50dB以上
出典:厚生労働省 【例3:手指機能害等級表の認定基準】
- 3級:両上肢のおや指及びひとさし指の機能を全廃したもの(※1)
- 4級:両上肢のおや指の機能を全廃したもの/一上肢のおや指及びひとさし指の機能を全廃したもの/おや指又はひとさし指を含めて一上肢の三指の機能を全廃したもの
- 5級: 両上肢のおや指の機能の著しい障害(※2)/一上肢のおや指の機能を全廃したもの/一上肢のおや指及びひとさし指の機能の著しい障害/おや指又はひとさし指を含めて一上肢の三指の機能の著しい障害
- 6級:一上肢のおや指の機能の著しい障害/ ひとさし指を含めて一上肢の二指の機能を全廃したもの
(※1:機能全廃)…まったく動かせない、あるいは動かせても極めてわずかで日常生活での使用ができない状態 (※2:著しい障害)…関節可動域が大きく制限され、握る・つまむなどの動作が困難になり、日常生活や仕事に明らかな支障がある状態 上記のように、障害の種類ごとに詳細な基準が決められています。 先天性、後天性、病気、事故などにかかわらず、申請時点の身体の状態が障害であると認定された場合、障害者手帳を取得できます。 出典:東京福祉局
身体障害者手帳の認定基準は厳しい?

前提として、身体障害者手帳の認定基準が、他の種別の障害者手帳と比較して特別厳しいということはありません。 身体障害者手帳は「障害が続くこと」を前提に、等級ごとに細かい基準が決められています。精神障害や発達障害とは違って、視力や聴力などの数値データや医師の診察によって客観的に判断しやすいため、基準が非常に具体的に設定されているのです。 その一方で、こうした認定基準の細かさから「審査が厳しい」と感じる人もいるかもしれません。ですが、実際には申請を難しくするためではなく、公平で客観的な判断を行うために詳細に基準が設けられているのです。 さらに、この基準は定期的に見直されているため、以前は対象外だった方でも、再申請によって取得できる可能性があります。 出典:東京福祉局
障害者手帳を取得する手順

障害者手帳の申請には、主治医が作成した診断書が必要です。申請に必要な書類は、役所の福祉課で受け取る、もしくはオンラインでダウンロードできる場合もあります。 申請時には、診断書のほかに以下の書類も必要です。
- 顔写真(縦4cm × 横3cm)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑(認め印)
※準備物は区市町村によって異なるケースがあるため事前に市区町村の福祉課に確認するようにしましょう <障害者手帳の取得手順> STEP.1:主治医に相談 症状がある程度固定されたと判断されたタイミングで、主治医に申請用の診断書を作成してもらいます。 STEP.2:役所に必要書類を提出して申請 診断書・意見書を受け取ったら、役所の福祉課に申請書類とともに提出します。 STEP.3:審査機関による審査 役所が申請書類を受理した後、申請書類をもとに専門機関で障害の程度について審査が行われます。 STEP.4:手帳の発行と交付通知 審査が完了すると、役所から交付の通知が届きます。その後、役所で障害者手帳を受け取ります。 主治医への相談から手帳が手元に届くまで、一般的には2〜3ヶ月ほどかかります。ただし、診断書作成の期間や審査の混雑状況によっては、3ヶ月以上かかることもあるため、取得を希望する場合は早めに行動するようにしましょう。 出典:多摩市・日野市
身体障害者手帳を取得するメリット

障害者枠での就労が可能になる
身体障害者手帳を取得する最大のメリットは、障害者枠での就労ができるようになる点です。 障害者枠で採用されると、会社側から合理的配慮を受けながら働くことができ、安心して長く就業できる環境を得ることができます。 【合理的配慮の例】
- 業務内容や業務量の調整
- 勤務時間の柔軟化
- 定期的な面談の実施
- 専用の業務マニュアルの提供
- 在宅勤務の許可など
具体的な配慮の内容は企業のルールや障害の内容によって異なりますが、合理的配慮を受けることで、就労による心身への負担を軽減することができます。障害者手帳を取得してからも一般枠で働くことは可能ですが、長期的な就労を目的とする場合は、基本的に障害者枠での就労がおすすめです。 また、障害者枠は一般枠とは採用枠が異なり、障害者を採用することを前提としています。そのため、障害を持っていることが、選考において不利に働くことがなく、一般枠での選考に参加するより採用される確率が高くなるというメリットもあります。 障害者枠で就労するメリットについては、こちらの記事「『障害者枠はデメリットしかないからやめとけ』は嘘!障害者雇用のメリットを徹底解説」でも詳しく解説しています。
生活の支援が受けられる
身体障害者手帳を取得することで、日常生活に関する支援を受けられる場合があります。 【生活支援の例】
- 訪問看護サービス(1~2級対象)
- 寝具洗濯・乾燥サービス(1~6級対象)
- 緊急通報システム設置(1~2級対象)
- 在宅リハビリ支援
- 在宅重度身体障害者訪問診査(リハビリセンターへの訪問が難しい重度身体障害者)
なお、支援の内容や対象等級は自治体によって異なるため、詳細は市区町村の福祉課で確認するようにしましょう。 出典:川崎市
障害者手帳を取得することで、助成金や交通機関の割引など、様々な金銭的な支援を受けることができます。 【医療助成金・税金の控除の例】
- 重度障害者医療費助成:障害等級1~2級が目安。入院・通院などにかかる自己負担額の助成が受けられる
- 特別障害者手当:障害等級1~2級が目安。月額28,840円が支給される。(所得制限あり)
- 税金控除(障害等級3~6級):年間27万円(所得税)年間26万円(住民税)
- 税金控除(障害等級1~2級):年間40万円(所得税)年間30万円(住民税)
出典:川崎市・厚生労働省・国税庁 【対象となる利用料の割引・免除の例】
- 公共交通機関の割引(JR・地下鉄・新幹線・都営バス・飛行機など)
- 娯楽施設の割引(映画館・水族館・遊園地など)
- 公共施設の割引・無料化(動物園・美術館など)
- NHK受信料の免除(条件を満たす場合)
- 携帯電話料金の割引(各通信事業者が提供するプランが適用)
助成制度や税控除の対象等級は自治体ごとに異なるため、申請前に自治体の福祉課で確認するようにしましょう。 また、障害によって社会生活へ支障が出ている場合は、社会生活に大きな影響が出ている場合、障害年金を受給できる可能性があります。 障害年金の受給は、障害者手帳の認定基準とは異なる「障害年金の認定基準」に基づく審査を受ける必要があります。 【障害年金の認定基準】
- 1級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 2級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
- 3級:身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
なお、令和7年度の障害年金の支給額は以下の通りとなっています。(出典:小川早苗社会保険労務士事務所 )
月額 | 年額 | 前年度の年額 | |
障害基礎年金1級 | 86,635円 | 1,039,625円 | 1,020,000円 |
障害基礎年金2級 | 69,308円 | 831,700円 | 816,000円 |
障害厚生年金 3級(最低保障) | 51,983円 | 623,800円 | 612,000円 |
子の加算1人目(障害基礎年金に加算) | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
子の加算2人目(障害基礎年金に加算 | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
子の加算3人目(障害基礎年金に加算 | 6,650円 | 79,800円 | 78,300円 |
配偶者 加給年金(障害厚生年金に加算) | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
障害年金生活者支援給付金1級 | 6,813円 | 81,756円 | 79,656円 |
障害年金生活者支援給付金2級 | 5,450円 | 65,400円 | 63,720円 |
上記の内容は毎年見直しが実施されているため、最新の情報は日本年金機構の公式サイトを確認しましょう。 出典:三重県・障害年金申請サポート
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