学習障害(LD)の人に向いてる仕事・おすすめの求人3選
学習障害は、文章を読むことや漢字を書くこと、計算をすることといった、基本的な学習能力に遅れが生まれる障害です。 本記事では、学習障害の人に向いてる仕事やおすすめの求人について解説します。
学習障害とは
まずは学習障害の概要を解説します。
学習障害(LD)の概要
学習障害は、ADHDやASDといった発達障害の一種です。 全般的には知的発達に遅れはないにもかかわらず、計算、文字の読み書き、話を聞く、といった基本的な学習能力のうち、1つもしくは複数をうまく習得できなかったり、生活上で困難を感じる障害とされています。 人によって症状が異なっていたり、目で見てわかる障害ではないため、本人や家族が障害に気がつくまで時間がかかることもあります。また、障害ではなくただ苦手なだけ、努力が足りないだけと勘違いされることもあります。 学習障害は、大きく下記の3つのタイプに分かれます。
- 読字障害(ディスレクシア)
- 書字障害(ディスグラフィア)
- 算数障害(ディスカリキュリア)
これらの症状については、幼少期だけでなく大人になってからも生活に影響がでることがあり、場合によっては大人になってから学習障害であると気がつく人もいます。 出典:文部科学省
学習障害の原因
学習障害の原因は現時点では解明されていません。 発達障害は、基本的には脳に関係しており、学習障害の場合は、目で見た情報を理解したり、字を音に変換したりする脳機能の一部に障害があると考えられています。 他にも、遺伝や環境といった要素も原因の1つの可能性があるとも考えられています。 出典:LITALICO
学習障害の治療方
学習障害を根本的に解決する治療法は、現時点では確立されていません。そのため、治療ではなく療育による対応が一般的です。 療育とは、障害のある子供に対して、発達状態や障害特性に合わせて、現状の生活する上での困難の解決や、将来の自立や社会参加のために準備をすることです。 たとえば漢字を書くことが苦手であれば、アニメやゲームなど本人が好きなことを活用して漢字の学習するなど。 学習障害の場合は、苦手な分野や領域に対して苦手意識を無くすことが第一とされています。当人にとって学びやすい学習方法を見つけて、成功体験を増やすことで、苦手なことに対しても前向きに取り組める状態を目指します。 出典:LITALICO
学習障害の症状
学習障害の症状について、種類別に解説します。
読字障害(ディスレクシア)
読字障害(ディスレクシア)は、文字を読むことに困難を感じる特徴があります。 読字障害の代表的な症状としては、以下のものが挙げられます。
- 文章を流暢に読むことができない(文章の区切りがおかしい等)
- 文章を理解するのに時間がかかる
- 文字や数を覚えるのに時間がかかる
上記のような症状があることで、社会生活においては以下のような影響があります。
- 文章を流暢に読み上げることができない
- 資料やマニュアル、メールの文章を理解するのに時間がかかる
- 電話対応が困難(電話口で聞いた相手の名前が覚えられないなど)
書字障害(ディスグラフィア)
書字障害は、上記のように手書きで文字を書くことに関する症状が出るのが特徴です。 書字障害の代表的な症状としては、以下のものが挙げられます。
- 漢字の偏とつくりを反対に書く
- バランスが極端に悪い字を書く
- 接続詞の誤用が多い
- 文章を構成するのが苦手
上記のような症状があることで、社会生活においては以下のような影響があります。
- 文字や数字が書けない
- 似た文字を書き間違える
- 文字を書く際に余分に線や点を書いてしまう
- 句読点をつけ忘れる
- 綺麗な文章を作ることができない
出典:JITALICOジュニア・ブレインクリニック・SYNODOS・東京都教育委員会・全国地域生活支援機構
算数障害(ディスカリキュリア)
算数障害は、足し算や引き算といった単純な計算をすることや、考えて答えを導く推論に困難を感じる特長があります。 算数障害の代表的な症状としては、以下のものが挙げられます。
- 足し算引き算ができない
- 数の大小がわからなくなる
- 繰り上がり、繰り下がりを理解できない
- 図形やグラフが理解できない
上記のような症状があることで、社会生活においては以下のような影響があります。
- 簡単な計算ができない
- 時間の計算ができずうまくスケジュール管理ができない
学習障害が仕事に与える影響
読字障害がある場合、文字を読むことに困難を感じる傾向があるため、資料やマニュアルを読み込むことが必要な仕事は難しくなります。 書字障害がある場合は、手書きで文字を書くことに困難を感じたり、人によっては文章を作ることに困難を感じる傾向があるため、手書きで文字を書いたり文章作成が必要な仕事は難しくなります。 算数障害がある場合は、計算や推論をすることに困難を感じる傾向があるため、自分で数字の計算をしたり、図の読み解きが必要な仕事は難しくなります。 一方で、上記のような、自分が苦手とする作業が発生しない仕事に関しては、取り組むことができる可能性があります。
学習障害の人に向いてる仕事
学習障害の人に向いてる仕事について、詳しく解説します。
学習障害の人に向いてる職種
学習障害の人に向いてる職種としては、読む、書く、計算するといった作業のうち、自分が苦手としている作業をできるだけ避けられる職種が該当します。 【学習障害の人に向いてる職種例】
- 清掃
- 軽作業
- 工場勤務
- データ入力(読字障害を除く)
上記のように、清掃や軽作業などの仕事であれば、読む、書く、計算するといった作業は最小限に抑えられるケースが多いため、学習障害の人全般的に向いている職種であると言えます。 書字障害がある場合、文章を書く必要がある仕事は困難であるケースが多いですが、パソコンを使った簡単なデータ入力業務、かつダブルチェックをしてもらえる環境などが揃えば、データ入力の仕事は就労可能な職種に該当します。 注意点としては、障害の程度や種類によって、どの作業がどれくらい苦手なのかは人によって異なるため、上記で紹介した職種も合う合わないがあります。仕事を選ぶ前に、自分の障害について整理し、苦手な業務を把握するようにしましょう。
学習障害の人が働きやすい環境
学習障害の人が無理なく働くためには、職種や障害の程度に関わらず周りの人のサポートが必要不可欠です。 理由としては、学習障害は見た目ではわからず、単純にやる気がなかったり努力が足りなかったりするだけと思われてしまうことがあるためです。そのため、自分が持つ障害について正しく理解してもらえる職場で働くことが大切です。 障害者雇用での就労であれば、障害に対する合理的な配慮を受けながら働けるため、障害者手帳を取得していたり、取得が可能な場合は、障害者雇用での就労がおすすめです。 また、働くことに対する不安が大きい人や簡単な作業を通して働くことに慣れていきたい人は、特例子会社や障害者向けサテライトオフィス・就労継続支援A型・B型での就労も選択肢に入ります。 それぞれの違いは、以下の表の通りです。
雇用契約 | 給与形態 | 就労場所 | |
特例子会社 | 結ぶ | 月給・時給 | 企業のオフィス |
サテライトオフィス | 結ぶ | 月給・時給 | サテライトオフィス |
就労継続支援A型 | 結ぶ | 時給 | 事業所 |
就労継続支援B型 | 結ばない | 工賃 | 事業所 |
それぞれについて、具体的に解説します。
特例子会社
特例子会社は、障害者の働く機会を増やすことを目的に大手企業が設立する障害者雇用に特化した企業です。 通常の障害者雇用でも障害に対する配慮を受けることはできますが、特例子会社は障害者の採用を前提にしているため、より個人の特性に合わせた配慮を受けることができます。 特例子会社の業務内容は、求人によって異なりますが、データ入力や社内郵便の担当といった簡単なものから、プログラミングやWebデザインといった専門職での就労が可能な場合もあります。 特例子会社については、こちらの記事「特例子会社で働くメリット・デメリットと実際の求人例を紹介」にて詳しく解説しています。
障害者向けサテライトオフィスでの就労
障害者向けサテライトオフィスは、自分が就職した企業のオフィスではなく、別の企業が管理するオフィスのことを指します。 サテライトオフィスには、障害に関する専門知識がある支援員が常駐しているため、困ったことがあればすぐに相談できる環境です。 業務内容は、所属している企業のものを担当する形になるため、特例子会社と同様に様々な職種での就労が可能です。 障害者向けサテライトオフィスについては、こちらの記事「障害者向けサテライトオフィスとは?働き方やメリット・デメリットを解説!」にて詳しく解説しています。
就労継続支援A型・B型
就労継続支援は、障害や難病を持ち一般就労が難しい人を対象とした就労支援事業所です。 企業ではなく作業所で業務を行いながら働くことに慣れることで一般就労を目指したり、そのまま長期的に継続支援事業所で働いたりすることも可能です。 業務内容は事業所によって設定されており、事務作業や軽作業、接客業や清掃など、比較的簡単で心身への負担が少ないものになります。 就労継続支援にはA型とB型の二種類があり、A型の場合は雇用契約を結ぶため最低賃金が保障されるのに対し、B型は雇用契約を結ばず作業量に対する工賃が支払われるため最低賃金は保障されません。 その分、B型は週1日や1日1時間というように、就労時間を体調に合わせて細かくコントロールすることが可能です。そのため、より障害の程度が重い人に向いています。 就労継続支援A型・B型については、こちらの記事「就労継続支援A型とは?手取り額やB型との違い・仕事内容を徹底解説!」「就労継続支援B型はどんな人におすすめ?作業内容や工賃を徹底解説!」にてそれぞれ詳しく解説しています。
学習障害の人におすすめの求人例3選
ビショップ
【求人情報】
- 職種:軽作業(障害者枠)
- 雇用形態:パート
- 業務内容:メンズ・レディース衣料品を販売する店舗でのバックヤード業務
- 時給:1,020円〜1,080円
- 勤務地:店舗に配属
- 応募資格:商品管理などバックヤード業務のご経験のある方
こちらは、アパレルブランドのバックヤードでの軽作業を担当する求人です。 業務内容は、入荷商品のチェックや整理、品出しといった比較的簡単な単純作業です。 学習障害が影響を与える業務が少ないため、障害への負担を軽減しながら働くことができます。 株式会社ビショップの求人はこちらからご覧ください。
ラクスみらい
【求人情報】
- 職種:データ入力(障害者枠)
- 雇用形態:正社員
- 業務内容:データ入力、データ集計、宅配業者対応、社内便対応
- 給与・年収:129,000円〜153,600円
- 勤務地:東京本社
- 応募資格:事務経験1年以上
ラスクみらいは、特例子会社の求人です。 特例子会社では先ほども解説した通り、個人個人の障害特性に合わせて徹底した障害への配慮を受けながら働くことができます。 業務内容は、データ入力や社内郵便の対応など、サポートを受けながら実施できるものとなっています。 株式会社ラクスみらいの求人はこちらからご覧ください。
大和ハウスライフサポート
【求人情報】
- 職種:総務・軽作業(障害者枠)
- 雇用形態:正社員
- 業務内容:食堂での配膳業務、施設の清掃、簡単な事務作業など
- 時給:1,100円〜
- 勤務地:静岡県
- 応募資格:基本的なPCスキル
こちらは、有料介護老人ホームでの総務や軽作業を担当する求人です。 業務内容は、簡単な事務作業や食堂での配膳、施設内の清掃など幅広く設定されています。 障害特性に合わせた業務を担当することも可能で、また週20時間から働くことができるため、就労に慣れていない人にもおすすめの求人です。 大和ハウスライフサポート株式会社の求人はこちらからご覧ください。
学習障害の人は障害者雇用で働ける?
障害者雇用での就労をするためには、障害者手帳の取得が必要になります。 学習障害は、発達障害に該当し、精神障害者保健福祉手の取得対象となる障害であるため、障害者雇用での就労が可能です。 障害者雇用は、障害に対する合理的配慮を受けながら働けます。 【障害者雇用で得られる合理的配慮の例】
- 業務内容の変更
- 業務上の直接的なサポート
- 勤務時間の調整
障害者手帳の取得には主治医の診断書が必要になるため、障害者雇用での就労を希望する場合は主治医に相談しましょう。
学習障害で障害年金は受け取れる?
学習障害と認定された場合、障害年金を取得できる可能性があります。受け取る条件と実際に受け取れた事例について紹介します。
学習障害で障害年金を受け取るためには
学習障害で障害年金を受給する条件は、障害が原因で日常生活や社会生活に影響が出ていると判断されることです。 障害年金には、1~3級まで3つの等級があり、等級が上がるほど障害年金の受給額が大きくなります。またこの等級は、障害者手帳の等級とは異なるため注意しましょう。 【発達障害による障害年金の受給基準】
- 1級:発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの
- 2級:発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの
- 3級:発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの
学習障害で障害年金を受け取れた事例(30代女性・障害基礎年金2級)
実際に学習障害によって障害年金を受給できた人の事例を紹介します。 こちらのケースでは、幼少期から字を読むことが苦手で、年齢が上がってもそれが改善せず、漢字を覚えることにも周りから遅れていました。 成人してからも障害が改善することはなく、職場で書類を読むことにも他人より時間がかかってしまうなど、仕事にも悪影響が出ていました。 仕事にも影響があり、アルバイト以上の労働が難しいという状況だったこともあり、障害基礎年金2級の受給対象と認定されました。 出典:全国障害年金郵送申請サポート
学習障害の人が向いてる仕事に転職する方法
最後に、学習障害の人が向いてる仕事に転職する方法を詳しく解説します。
就労移行支援を利用する
就労移行支援は、学習障害を含む障害を持つ人を対象とした就労支援サービスです。 選考のサポートや求人の紹介、就職後の定着支援、そして一般就労で役立つスキルの教育など、転職活動を開始するための準備から就職後の定着支援まで、総合的なサポートを受けらます。 【就労移行支援で学べるスキルの例】
- プログラミング
- Excel word
- 軽作業
- CAD設計
- グラフィックデザイン(IllustratorやPhotoshop)
- グループワーク
- ビジネスマナー
時間をかけて一般就労への準備をする流れになるため、すぐに転職することが不安な人や、未経験の職種に転職したい人におすすめの転職方法です。 就労移行支援については、こちらの記事『「就労移行支援」は「就労継続支援」とどう違う?メリットとデメリットも解説!』にて詳しく解説しています。 また私たち障害者雇用バンクでは、就労移行支援事業所「エラビバ就労支援」を運営しています。関東で就労移行支援事業所をお探しの場合は、ぜひ無料見学にお越しください。
転職エージェント・ハローワークを利用する
体調面やスキルの観点から転職の準備が整っている場合は、ハローワークや転職エージェントを利用しての転職活動もおすすめです。 ハローワークと転職エージェントは、どちらも転職活動の総合的なサポートを受けられるサービスで、公的組織、民間企業という点と、求人の内容に違いがあります。 ハローワークは、企業側が無料で求人が掲載できるため、非常に多くの求人が掲載されています。 それに対して転職エージェントは、エージェント側が精査した求人のみが掲載されています。 そのため、できるだけ多くの選択肢から転職先を選びたいという場合はハローワーク、より自分に合った求人を提案してもらいたい場合は転職エージェントの利用がおすすめです。
料金 | 運営方法 | サポート体制 | 求人の数 | 求人の質 | 拠点 | |
ハローワーク | 無料 | 税金で運営 | 担当者ごとにばらつきあり | 多い | 玉石混交 | 全国各地 |
転職エージェント | 無料 | 企業から紹介料を得て運営 | 専門の転職コンサルタントが手厚くサポート | 少ない(ハローワークと比較すると) | 選ばれた求人のみ掲載 | エージェントによる ※Web会議や電話で相談できる場合もある |
障害者枠で選考を受ける場合、転職エージェントのサポートを受けることで、
- 企業側へどのように伝えると好印象を与えられるかを教えてくれる
- 面接後にキャリアアドバイザーからあなたの良さを企業側にプッシュしてくれる
- 入社決定後、企業側への障害や病気の説明をしてくれる
ハローワークや転職エージェントは、無料で全てのサービスを利用できます。また就労移行支援と並行して利用することも可能です。
日本最大級の障害者向け求人サイト
「障害者雇用バンク」
数多くある障害者の転職サイトのなかでも、日本最大級の障害者向け求人情報を提供する「障害者雇用バンク」は業界初「人材紹介の求人情報データベースとハローワークの求人データベースの両方の情報の提供」障害者の転職をトータルで支援します。
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