難病でもできる仕事を徹底解説。実際の求人・就労支援やハローワークのサポートも紹介
病気には様々なものがありますが、その中でも特に生活への影響が大きいものが「難病」に該当する病気です。 今回は、この難病が仕事に与える影響や難病を抱えながらでもできる仕事について、具体例を挙げながら解説します。
難病とは?
まずは難病について、詳しく解説します。
難病の定義
「難病」とは、風邪などの一般的な病気と比較し、症状が重かったり、治療法が確立されていなかったりする病気の総称です。 これまで医学的には明確な線引きはされていませんでしたが、2015年に「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」が施行され、下記の定義がされました。 【難病の定義】
- 発病の機構が明らかでない
- 治療方法が確立していない
- 希少な疾病
- 長期の療養を必要とするもの
難病に該当する病気は多数あり、それぞれによって症状や治療法が異なります。 なお、上記の定義と合わせ、下記の2つの条件をどちらも満たす場合、指定難病に該当します。
- 患者数が一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと
- 客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が成立していること
これらの条件を全て満たす病気は、良質かつ適切な医療の確保を図る必要性が高いものとして、指定難病に指定されます。 出典:厚生労働省 指定難病の要件について
指定難病に該当する病気
指定難病は、15の疾患群にそれぞれ分類されます。下記では、その分類と、該当する病気の例をまとめています。
- 神経・筋疾患:筋ジストロフィー・多発性硬化症
- 代謝系疾患:副腎白質ジストロフィー・ライソゾーム病
- 皮膚・結合組織疾患:神経線維腫症・天疱瘡
- 免疫系疾患:悪性関節リウマチ・ベーチェット病
- 循環器系疾患:特発性拡張型心筋症・ファロー四徴症
- 血液系疾患:再生不良性貧血・自己免疫性溶血性貧血
- 腎・泌尿器系疾患:多発性嚢胞腎・IgA腎症
- 内分泌系疾患:下垂体性ADH分泌異常症・甲状腺ホルモン不応症
- 骨・関節系疾患:黄色靭帯骨化症・骨形成不全症
- 呼吸器系疾患:サルコイドーシス・ 肺動脈性肺高血圧症
- 聴覚・平衡機能系疾患:鰓耳腎症候群
- 視覚系疾患:網膜色素変性症・黄斑ジストロフィー
- 消化器系疾患:クローン病・潰瘍性大腸炎
- 染色体または遺伝子変化を伴う症候群:チャージ症候群・CFC症候群
- 耳鼻科系疾患:アッシャー症候群・アッシャー症候群
上記で紹介した病気はあくまでごく一部で、2023年現在、指定難病に該当する病気は、300を超えており、今後も増えることが予想されます。 IgA腎症と関節リウマチについては、こちらの記事「IgA腎症の人に向いてる仕事とは?腎臓病の人におすすめの求人を紹介」「リウマチでやってはいけない仕事とは?おすすめ求人も紹介」にてそれぞれ詳しく解説しています。 出典:埼玉県 指定難病名一覧
難病の人でもできる仕事とは
続いて、難病の人でも無理なくできる仕事について解説します。
難病の人が無理なく仕事をするためには
前提として、病気の症状によって、できる仕事とできない仕事には違いがあります。 その上で、理解のある職場で働くことと、自分の病気に負担が少ない職種を選ぶことが大切です。 【理解のある職場の条件】
- 業務内容を調整してくれる
- 体調が急に悪くなった場合に柔軟に対応してもらえる
- 通院のための休みが取れる(通院休暇制度があるとより良い)
仕事の内容ももちろん大切ですが、まずは良い環境を選ぶことが、難病の人が無理なく働くための前提条件となります。
難病の人でもできる職種
難病の人には、身体的な負担が大きい肉体労働や、ストレスが溜まりやすい職種は、病気に悪影響を与える可能性があるためお勧めできません。 難病の人におすすめの職種としては、心身への負担が少ないデスクワークが挙げられます。 【おすすめの職種例】
- 一般事務
- 経理
- 人事
- プログラマー・SE
- Webデザイナー
- データ入力
患っている難病によって、できる仕事には違いがあるため、仕事選びを始めるタイミングで主治医へ相談するようにしましょう。
難病の人が就職する方法
難病の人におすすめの、就職、転職活動の方法を解説します。
ハローワークを利用する
ハローワークは、一般的には求人の紹介を受けられる支援施設となっていますが、難病の人が利用する場合、専用の支援を受けることができます。それが、難病患者就職サポーターによる支援です。 難病患者就職サポーターとは、各都道府県や政令指定都市に配置されている難病患者の生活全般のサポートを行う難病相談支援センターと連携し、難病患者の就職、転職活動の支援を行ってくれる支援サービスです。 具体的には、病気の症状や特性に合わせた就労支援や、在職中に難病を発症した人が継続して働けるための支援を行っています。 自分に合った仕事を見つけるために、ぜひ利用いただきたい支援です。 出典:厚生労働省 難病患者の就労支援
就労移行支援事業所を利用する
就労移行支援事業所は、障害や難病を抱えた人の就労支援を行っている施設です。 就労移行支援の一番の特徴は、働く上で武器になるスキルを身につけられる点です。 【スキルの例】
- 事務スキル(PC操作)
- プログラミング
- Webデザイン
上記のような実務で武器になるスキルを、カリキュラムに沿って学びながら転職活動が行えます。また、転職後の定着支援も実施しています。 就労移行支援については、こちらの記事『「就労移行支援」は「就労継続支援」とどう違う?メリットとデメリットも解説!』にて詳しく解説しています。
転職エージェントを利用する
転職エージェントは、各企業が運営する就職支援サービスです。 求人の紹介や面接練習など、転職活動全般の支援を受けられます。 また、難病により障害者手帳を取得している場合は、障害者雇用専門の転職エージェントを利用できます。こちらでは、障害者雇用の専門知識を持ったスタッフによる支援を受けられます。 転職エージェントは、全てのサービスを無料で利用できる点もメリットです。
大塚商会
【求人情報】
- 職種:一般事務(障害者枠)
- 雇用形態:正社員
- 業務内容:電話対応、契約書・納品書・請求関連書類、請求・回収
- 給与・年収:220,000円〜240,900円
- 勤務地:東京本社
- 応募資格:初級レベルのPCスキル
業務内容としては、電話対応や書類の確認など、営業部のサポート業務がメインになります。 大塚商会の求人は、障害者雇用の求人の中でも給与が高めに設定されているのが特徴です。 大塚商会については、こちらの記事『「成果を正当に評価する会社なんです」——大塚商会・土谷知子さんに聞く、障害の有無に関係ない評価制度』にて詳しくお話を伺っています。 株式会社大塚商会の求人はこちら
カオナビ
【求人情報】
- 職種:エンジニア(障害者枠)
- 雇用形態:正社員
- 業務内容:クラウド型人材管理プラットフォーム『カオナビ』の開発・提供・サポート業務の中からスキル、および適性を見てお任せいたします
- 給与・年収:2,760,000円〜12,000,000円
- 勤務地:東京本社
- 応募資格:チームワークを大切にできる力、人の話を真摯に聴く力、ご自分の障害への理解、プログラム作成の実務経験(言語問わず)、複数エンジニアによるチームでの開発経験、インターネットに関する基礎知識
こちらは株式会社カオナビのエンジニア求人です。 特定のプログラミング言語に限定した募集ではないので、エンジニアとしての実務経験がある方であれば応募可能となっています。 また給与の上限が非常に高く設定されているのも特徴で、専門性の高いスキルや豊富な経験がある方の場合、高額な給与を受け取ることも可能です。 株式会社カオナビの求人はこちらからご覧ください。
りそな銀行
【求人情報】
- 職種:事務補助(障害者枠)
- 雇用形態:嘱託社員
- 業務内容:データ入力、電話対応、その他事務作業全般
- 給与・年収:214,100円
- 勤務地:東京本社
- 応募資格:特になし
こちらは、りそな銀行が募集している一般事務の求人となります。 雇用形態は、正社員ではなく嘱託社員になりますが、給与は安定しています。 また業務内容も比較的簡単なものが多く、応募資格が設定されていないのもこの求人の大きなメリットです。 りそな銀行の求人はこちらからご覧ください。
難病の人は障害者雇用で働ける?
障害者雇用で働くためには、身体、精神、知的いずれかの障害者手帳の取得が必要です。 難病の中には、障害者手帳の取得対象となるものとならないものがあるため、主治医への相談し、取得対象になるかどうかの確認を行いましょう。 基本的に、難病の症状が障害に該当する場合は取得対象になります。 たとえば、難病の影響で手足に麻痺が出ていたり、聴力や視力に影響が出ていたりする場合は、それぞれ障害と認定される可能性があります。 ほかにも、IgA腎症であれば腎機能障害、関節リウマチの場合は上下肢障害として障害認定され、障害者手帳を取得できます。
難病でも長く続けられる仕事に就ける!転職成功のポイント
最後に、転職を成功させるためのポイントを解説します。
採用面接で病状を説明し、業務上受けたい配慮を伝えておく
難病を持ちながら働くためには、職場からの病気に対する理解とサポートが必要不可欠です。 そのため、面接時に自分の病気について詳しく説明し、働く上でどういった配慮が必要になるのかを具体的に説明しましょう。 就職をするために、病気のことを隠したり軽く説明していたりすると、入社してから体がついていけず、病気の悪化を引き起こしてしまう可能性があります。 そのため、入社前に正しく説明し、自分が働ける職場なのかどうかを確認しておきましょう。
業務に必要なスキルを身に着けておく
難病である場合、病気の影響で、フルタイム勤務ではなく、短時間の仕事になるケースが少なくありません。 短時間の仕事しかできない中で、競争率の高い仕事に就きたい場合、完全な未経験で選考を受けるよりも、最低限の業務知識を持った状態で選考を受ける方が圧倒的に採用される可能性が上がります。 例えば、システムエンジニアの求人の場合、プログラミングの知識がゼロの状態で採用されることは難しいですが、職業訓練校などでプログラミングの知識を身に付けることで、まずは「プログラマー」として採用される可能性が出てきます。 そして、プログラマーとして実務経験を積むことで、その後にシステムエンジニアやwebエンジアとしてキャリアアップする道が生まれます。 職業訓練校や就労移行支援などで特定分野の知識や経験を取得することで、一気に選べる求人の幅が増え、自身の病状と両立できる仕事に巡り合う可能性をグッと高めることができます。
転職エージェントを活用し非公開求人をチェックする
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料金 | 運営方法 | サポート体制 | 求人の質 | 拠点 | |
転職エージェント | 無料 | 企業から紹介料を得て運営 | 専門の転職コンサルタントが手厚くサポート | 選ばれた求人のみ掲載 | エージェントによる ※Web会議や電話で相談できる場合もある |
転職サイト | 無料 | 企業から掲載料を得て運営 | 基本的になし | 掲載料を支払った会社の求人が掲載 | 基本的にサポート拠点はなし |
ハローワーク | 無料 | 税金で運営 | 担当者ごとにばらつきあり | 幅がある | 全国各地 |
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