障害者の最低賃金や障害別の平均月収を解説【比較表あり】
結論からいえば、障害者も健常者も最低賃金は同じです。ただし障害者の場合、特例許可制度で最低賃金を割る賃金になる可能性もある点には注意が必要です。 この記事では、障害者と健常者の最低賃金が同じになる理由や、障害者の給料の実態、障害者雇用の給料が安く感じる理由について紹介します。
障害者の最低賃金は原則一般就労と同じ
結論からいえば、障害者であっても健常者であっても最低賃金は同じです。ここではなぜ最低賃金が同じなのか、また最低賃金の例外である「特例許可制度」について解説します。
障害を理由に賃金を差別することは禁止されている
健常者と障害者の最低賃金が同じである理由は、障害を理由に賃金等を差別することが禁止されているからです。具体的には、以下の法律が関わっています。
- 障害者基本法
- 障害者差別解消法
障害者基本法では、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」として、障害者と健常者が平等であることが示されています。 また、障害者差別解消法は、障害を理由に差別をすることを禁じた「不当な差別的取扱いの禁止」を含む法律です。 以上2つの法律から考えると、最低賃金が障害者・健常者に関わらず適用されることがわかるでしょう。
ただし障害の程度により「特例許可制度」で賃金が安くなる可能性も
ただし、障害の程度によっては最低賃金より低い賃金となる「最低賃金の減額の特例許可制度」が適用される可能性があるので注意しましょう。最低賃金の減額の特例許可制度とは、都道府県の労働局長の許可があれば、個別に最低賃金以下の賃金が適用できるという制度です。 ここまでを読むと、障害者に不利な制度だと思われるかもしれません。しかし実際は、障害者の雇用を守る制度でもあります。もし最低賃金を業務に一律に適用することになると、予算の都合等で障害の程度が重い方向けの仕事が減ってしまう可能性があるからです。 とはいえ、ただ単に障害があるからといって常に特例許可が出るとはいえません。多くの場合は最低賃金以上の給料で働くことになるでしょう。
障害者の給料の実態を紹介
最低賃金より高いとはいえ、障害者の給料は一般就労と比較すると低めな傾向があります。ここでは、障害種別の給料の実態について紹介します。
障害種別によって給料に差がある
障害種別の給料の平均は以下の表の通りです。
全体平均 | 週30時間以上の勤務 | 週20時間~30時間の勤務 | 週20時間未満の勤務 | |
身体障害 | 21万5千円 | 24万8千円 | 8万6千円 | 6万7千円 |
精神障害 | 12万5千円 | 18万9千円 | 7万4千円 | 5万1千円 |
発達障害 | 12万7千円 | 16万4千円 | 7万6千円 | 4万8千円 |
知的障害 | 11万7千円 | 13万7千円 | 8万2千円 | 5万1千円 |
全体平均は身体障害者が一番高く、知的障害者が一番低くなっています。障害者雇用といっても、障害種別に平均給料に差があります。全体平均はもちろんのこと、時間別で見ると差は少ないものの、身体障害者の給料が高い傾向にあるのは変わりません。 とはいえ、この表はあくまでも平均値です。実際は障害の程度や業務内容に応じて給料が変わってくる点はおさえておくとよいでしょう。
一般就労と比較すると給料は安い傾向に
障害者として働くと、一般就労に比べて給料が安い傾向にあります。障害者の平均給料は月に14万6,000円で、12倍して年収に換算すると約175万円です。一方、dodaの平均年収ランキングによれば、日本全体の平均年収は409万円となっています。 一般就労の年収にはボーナスが含まれていますが、仮にボーナスを含めたとしても、一般就労のほうが障害者よりも給料が高めです。 なお、障害者の給料の実態はこちらの記事「障害者雇用の平均年収は低い? その理由と年収アップの方法を解説!」で詳しく解説してます。
障害者雇用の賃金が安く感じる理由
調査結果からもわかるように、障害者向けの求人を探すと給料が少ないと感じることも多いでしょう。障害者雇用の給料が安い傾向にあるのは、以下の4つの理由があるからです。
- 労働時間が短く設定されている
- 雇用形態ごとに賃金の差がある
- 職種・業務内容が限定されている
- 給料の上がりにくい職種・業界を選んでいる
それぞれについて解説します
労働時間が短く設定されている
障害者の求人の場合、健常者と比べて労働時間が少ない傾向にあります。同じ業務を7時間行うのと6時間行うのでは、どうしても賃金に差が出てきてしまうでしょう。 もしも求人を探している際に給料が安いと感じたら、まずは労働時間に差がないかを確認することをおすすめします。
雇用形態ごとに賃金の差がある
障害者・健常者を問わず、雇用形態ごとに賃金に差があるのが現状です。雇用形態としては、以下の4つが想定されます。
- 正社員
- 契約社員
- パート・アルバイト
一般的には正社員の給料が高く、パートやアルバイトの場合は給料が低めになる傾向にがあります。そのため、求人を探す際には雇用形態もあわせて確認するとよいでしょう。
職種・業務内容が限定されている
給料は、業務の専門性や複雑さなど複数の要因にもとづき、仕事内容に見合う額が報酬に定められています。障害者雇用の場合、障害に配慮をした業務が用意されている場合が多いため、給料が低い傾向があります。一般的に給料は、業務の内容や難易度によって左右されます。 そのため、より専門的で難易度の高い業務を行うと、高い給料が期待できます。
給料の上がりにくい職種・業界を選んでいる
障害者雇用、一般就労に関係なく、給料は職種や業界によって変わります。会社の売り上げに直結する営業職などはインセンティブがあったり、給料が上がりやすいケースが多いでしょう。一方、売り上げに直結しない総務などの事務職は給料が上がりにくいケースが多いといえます。 また、IT業界のように市場が急成長している場合には給料が上がりやすいことが多いでしょう。反対に、成熟している業界では今以上に給料があがる場合は少ないといえます。
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