「障害者が“困った”ときに、周囲が手を差し伸べてくれる会社は働きやすい」—— 坂井剛さんが2度の転職を経て思うこと

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障害者の「はたらく」を取り巻く環境は、理想と現実が乖離しているのが現状です。民間企業であれば、全従業員の2.2%に相当する障害者を採用する義務があります。しかし、その水準を満たせている企業はほとんどありません。

また仮に就職することができても、障害への理解のなさから生まれる人間関係に悩み、早期退職をしてしまう雇用者がたくさんいます。能力的に十分こなせる仕事だったとしても「障害者だから」という理由で、採用してもらえないこともあるそうです。

障害者雇用バンク編集部は、そうした障害者の“リアル”をインタビューし、正しい理解を届けることで、よりよい“はたらく”を実現します。

第二弾となる今回は、障害者向け求人サイト「障害者雇用バンク」を通じて東証一部上場企業への転職を決められた坂井剛さんにインタビュー。

二度の転職活動を経て、障害者にとって働きやすい環境について考えてきた坂井さんに、これまでのキャリアと転職のコツについてお話を伺いした。

「やりたいこと」より「できること」でキャリアを選択

—— それでは坂井さん、本日はよろしくお願いします。早速ですが、まずは坂井さんがお持ちの障害について教えてください。

坂井:私は生まれつき「脳性麻痺」を持っています。運動機能の一部に障害があり、右半身に違和感を感じたまま人生を過ごしてきました。

とはいえ、先天性の障害なので、特段不自由を感じたということもありません。右半身が全部、利き腕とは違う手を操っているような感覚だと思っていただければ、理解していただきやすいと思います。

—— 先天的な障害を持っているとなると、今までの人生が「障害と共にあった」ということですよね。お仕事などは、どのようにして選択されたのでしょうか。

坂井:おっしゃる通り、生まれた時から障害を持っているので、私にとって障害や障害者は身近な存在でした。そうしたこともあって、もともとは理学療法士を目指していましたね。

以前、福祉系のサービス提供者に向かい、「健常者のお前に何が分かるんだ」と噛みつく障害者を見たことがありました。そのときに「障害を持つ当事者の自分なら、気持ちが理解でき、等身大の療法を提供できる」と思ったんです。

しかし、ぼんやりとそうした夢を持ち始めた高校生の頃には、既に文系の道に進んでいたので、諦めざるを得ませんでした。

—— そうだったんですね。現在の仕事は、どのようにして選ばれたのでしょうか?

坂井:理学療法士になることを諦めた後は、社会福祉関連の仕事に就こうと考えていました。ただ、この仕事もずっと続けるには大変だと感じてしまいました。障害者が共同生活を送るための施設に実習で伺い、障害者の皆さんの介助も体験したのですが、施設利用者の気持ちになって考えてみると「障害者である僕に少しでも不安を持ってしまったら、胸を張って“仕事”とは言えないんじゃないか」と思ったんです。

そうして最終的に行き着いたのが、パソコン関連の仕事です。当時パソコンスクールのアルバイトで講師を勤めていて、「パソコンを扱えることで、お金が稼げるんだな」と知り、ファーストキャリアを決めています。

エージェント選びのキモは「一緒に転職活動をしてくれるか」

—— これまでのキャリアは、どれもIT関連企業だとお伺いしています。どのような業務に従事されていたのでしょうか?

坂井:自社システムの運用や、外部の金融系システムの運用が主な業務です。障害者雇用枠で入社したのですが、選考フローも一般採用と変わらず、ごくごく普通のサラリーマンとして働いていましたね。細かな配慮をしてくれる会社だったので、特に不満もなく働いていました。

—— ではなぜ、転職をされたのでしょうか…?

坂井:残業が多く、不規則な生活リズムが祟って、障害には関係なく体を壊してしまったんです。そのタイミングで退職して療養にあて、前職の経験が活かせる企業に転職しました。二社目も幸い環境に恵まれ、14年ほど勤務いたしました。

ただ今度は、障害のコンディションが悪化してしまいました。歩く速度が遅くなるなど、健常者のみなさんと働くのが困難になってしまったんです。

相談すれば親身に対応してくれる会社ではありましたが、それまで健常者と変わらない働き方をしていたので、「今さら障害者であることを前面に押し出すのも気がひける」と、環境をリセットすることにしました。

—— 転職をするにあたって不安要素は多かったのではないでしょうか。

坂井:おっしゃる通りです。僕の年齢で転職をするとなると、ある程度は即戦力であることが求められます。等身大で働けて、なおかつ自分の経験が活かせる会社を探すのは、簡単なことではありません。

今回も、これまでの転職も、エージェントを利用しています。私にとって、最も信頼できる転職エージェントは「エラビバ」だったと思います。

—— 「エラビバ」は、他の転職エージェントと比較すると、どのような違いがあるのでしょうか。

坂井:レスポンスがとにかく早かったです。仕事を探している側としては、気になる求人情報の最新動向が知りたいもの。連絡に対して即時対応してくれたので、とても助かりました。

以前利用したエージェントでは、連絡をしても、しばらく放置されることが多々ありました。しかし「エラビバ」は、即時レスポンスをくれますし、面接後のアフターケアまで丁寧です。「一緒に転職活動をしてくれている」と感じ、とても心強かったです。

また他社様の転職サイトでは、私の希望とは異なる条件の求人を提案してきたり、提案された求人に年齢制限があり、そもそも面接を受けられなかったり、不満を感じることが少なくありませんでした。「転職サイトあるある」だとは思いますが、「エラビバ」には、そうしたストレスを感じることもなかったですね。

経験者が考える、障害者の転職活動で重視すべきこととは?

—— エラビバを利用して、納得のいくお仕事には巡り会えましたか?

坂井:素敵な企業様とのご縁をいただくことができました。面接は「いいことをアピールされる」場所だと思っているのですが(笑)、その前提があったとしても、「障害者に正しい理解のある会社」だと感じています。配属予定だったオフィスの最寄駅に、歩行の不安があることを伝えると、勤務地を変えていただいたんです。

実は初めての転職活動の際に、一度内定をいただいた会社の勤務地が急遽変更になったことで、泣く泣く辞退したことがあります。転職活動をゼロからやり直さなければならず、1年ほど仕事ができなかった期間があったので、今回の臨機応変な対応は本当にありがたかったです。

ほかにも、満員電車を避けて時差出勤ができるか、働きやすいオフィスか、といった細かい不安を事前に確認させていただくことができ、理想の職場に巡り会えたと思っています。

—— 事前に、坂井さんの「できること」と「できないこと」をヒアリングし、丁寧に対応してくださったんですね。

坂井:そうですね。僕が転職にあたり最も重視していたことでもありますが、「周囲の人たちが障害者と働くことに慣れているか」「自分のことを正しく理解してくれるかどうか」は、働きやすさに直結すると感じています。

僕は個人的に、自分が「困っている」と伝えたときに助けてくれるくらいの距離感が、ちょうどいいんです。過剰にケアをされると逆に困ってしまいますし、とはいえ助けてもらえないのも困ってしまう。この温度感を理解していただけるのは、障害者の採用実績が豊富だったからだと思います。

—— とはいえ、「どこまで手助けをしたらいいか分からない」健常者は多いと思います。

坂井:健常者の方も、障害者と働く際に、心労が多いのは理解しています。ただ、先天性の障害を持つ私たちは、いわば“プロの障害者”です。お互いに分かりきれないこともあると思いますが、本当に助けてほしいときは声を上げるので、もっとフランクに接していただければ嬉しいです。

“みんなにとって80点”の環境づくりで、生きやすい社会になる

—— 坂井さんはこれまでの転職経験を踏まえ、障害者が働きやすい環境は整っていると感じますか?

坂井:少なくとも私が働いてきた会社では、心ないことを言われたことはありません。幸い人間関係に関しては、大きなトラブルはありませんでした。

ただ、設備面においては、まだ改善の余地があると感じます。“バリアフリー”をうたう環境が増えてきていますが、まだまだ改善できると思いますね。健常者視点の施設は不自由を感じる人がいても、障害者視点の施設に、不自由を感じる人はいないはずです。もう少し、配慮が行き届いてくれたら嬉しいです。

ただ、全てを整備するには莫大なコストがかかりますし、その良し悪しは人によって基準が違います。たとえば、盲目の人にとって大切な点字ブロックは、歩行が難しい私にとっては「おっかないもの」です。

障害と一口にいっても、人それぞれ。一括りにはできないため、難しいですよね。全ての人にとって100点の環境づくりは実現不可能だとしても、いつか「みんなにとって80点」の環境ができるといいな、と思います。

—— 最後に、障害者として転職活動をする皆さんに、アドバイスをお願いします

坂井:障害者の転職活動に限ったことではありませんが、面接官の方は会社代表ですから、会社の良いところをアピールします。なので、全てを鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考える工夫をしてください。

また転職前に、現場で働く社員に話を伺うと、会社のことがよりよく分かると思います。自分が配属される先の細かな設備やレイアウトを確認することも大切です。私の場合は「席が奥の方だと、周囲の人に迷惑をかけてしまう」と伝えていました。

また、障害者が働く上で最も大切なことは、できないことを正直に「できない」と言うことだと思っています。背伸びして内定を勝ち取っても、転職後に苦労をしてしまうようでは、本末転倒です。

ただ中途採用において、経験や技術が求められるのは、健常者の転職活動と同じ。私は1社目に入社した際、周囲の人たちが「英語が堪能」もしくは「パソコンスキルを持っている」環境だったので、追いつけるよう、スキルの習得に奔走しました。そうした努力を継続的に行っておけば、いつか実になる日がくると思います。

障害者のために設置された「点字ブロック」が、障害者の脅威になることもある。「誰かをサポートするための施策が、誰かを困らせてしまうこともある」という忘れられがちな指摘に、ハッとさせられました。

気づいていないだけで、日常生活のいたるところに、きっと障害者にとっての“壁”がたくさんあるのでしょう。まずはその事実を理解しなければ、お互いにとって生きやすい環境づくりは難しいと思います。

もちろん環境だけでなく、私たちの心がけにも同じことが言えます。半径5メートル圏内にいる仲間が不自由なく働けているか、そうした配慮を心がけるだけで、障害者の「働く」取り巻く環境は、よりよくしていけるのではないかと思います。

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