弱視・緑内障で障害者手帳を取得するための条件・申請手順・メリットを解説

視覚・視野障害の症状の1つである弱視や、視覚障害を引き起こす病気である緑内障。 本記事では、弱視や緑内障で障害者手帳を取得するための条件や手続き、取得するメリット、実際のおすすめ求人を紹介します。
視覚障害とは

まずは視覚障害の概要について解説します。
視覚障害の種類
視覚障害は「視力」や「視野」に障害がある状態を指し、大きく以下の2つに分かれます。
- 弱視:視力が低下したり視野が狭くなる状態(緑内障なども含む)
- 盲:ほとんど、または全く視覚情報が得られない状態
出典:日本学生支援機構
弱視の概要・症状
弱視は、矯正視力(メガネやコンタクトレンズで矯正後の視力)が十分に出ない状態を指します。 弱視の症状の種類としては、以下のようなものがあります。
- 視力の低下
- 片目の視力の悪さ
- 立体視障害
- 視覚的な疲労や不快感
- 視野の制限
- 細かいものの違いが見分けられない
- 光過敏
- 目の位置の異常(斜視)
これらは先天的なものや、緑内障や白内障など目の病気によって後天的に発症するものがあります。 出典:ふじ眼科クリニック
緑内障の概要・症状
緑内障とは、目と脳を繋ぐ視神経を構成する網膜神経節細胞に異常が起こることで引き起こされる眼疾患です。 この細胞がダメージを受けることで関連する一部の視野が欠損し、その後も徐々に進行します。そして、最終的には失明に至ることもあります。 緑内障は、早期に発見し治療をすることで症状の進行を遅らせることは可能ですが、進行するまで自覚症状がほとんどないとされています。 出典:ロート製薬
症状の状態によっては障害者手帳を取得できる
弱視は主に視力の低下を特徴とし、緑内障は視野が欠けていく進行性の疾患です。両者の症状や経過は異なりますが、障害認定では視力・視野それぞれの基準に基づいて判断されます。 弱視や緑内障による視力、視野の障害は、症状の程度によって「視覚障害」や「視野障害」として障害者手帳の取得対象となります。認定基準は矯正視力や視野検査の結果に基づき決定されます。 それぞれの基準は以下の通りです。 【視覚障害の等級基準】
- 1級:両眼の視力の和が0.01以下のもの
- 2級:両眼の視力の和が0.02以上0.04以下のもの
- 3級:両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの
- 4級:両眼の視力の和が0.09以上0.12以下のもの
- 5級:両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの
- 6級:一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、 両眼の視力の和が0.2を超えるもの
【視野障害の等級基準】
- 2級:両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野につ いて視能率による損失率が95パーセント以上のもの
- 3級:両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野につ いて視能率による損失率が90パーセント以上のもの
- 4級:両眼の視野がそれぞれ10度以内のもの
- 5級:両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの
出典:厚生労働省
障害者手帳を取得する手順
障害者手帳を申請する際には、主治医の診断書が必要です。それ以外の申請に関する書類は、基本的に各自治体の福祉窓口で入手できますが、自治体によってはウェブサイトからダウンロードができる場合もあります。 申請する際は診断書とともに、下記の書類を準備しましょう。
- 顔写真(縦4cm × 横3cm)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑(認め印)
※準備物は区市町村によって異なるケースがあるため事前に市区町村の福祉課に確認するようにしましょう <障害者手帳の取得手順> STEP.1:主治医に相談 症状が日常生活に支障を与えている場合、主治医に申請用の診断書を作成してもらいます。 STEP.2:役所に必要書類を提出して申請 診断書・意見書を受け取ったら、役所の福祉課に申請書類とともに提出します。 STEP.3:審査機関による審査 役所が申請書類を受理した後、申請書類をもとに専門機関で視覚障害の程度について審査が行われます。 STEP.4:手帳の発行と交付通知 審査が完了すると、役所から交付の通知が届きます。その後、役所で障害者手帳を受け取ります。 医師への相談から実際に手帳が交付されるまでは、通常2〜3ヶ月程度の期間を要します。ただし、診断書作成の状況や審査の混み具合によっては、さらに時間がかかる場合もありますので、余裕をもって手続きを進めましょう。
弱視・緑内障の人が障害者手帳を取得するメリット

続いて、障害者手帳の取得によるメリットを解説します。
障害者枠での就労が可能になる
障害者手帳を取得すると、障害者雇用枠での就労が可能になります。 障害者枠で採用されると、業務内容や勤務時間の調整など、障害に対する合理的配慮を受けながら働けるようになるため、就労による心身への負担を軽減できます。 また、障害者枠は一般枠とは採用枠が異なり、障害者専用の雇用枠です。そのため、障害を持っていることが選考において不利に働くことがなく、一般枠で選考を受けるよりも採用される確率が高くなります。
生活の支援が受けられる
障害者手帳を取得することで、日常生活に関する支援を受けられる場合があります。 【生活支援の例】
- 訪問看護サービス(1~2級対象)
- 寝具洗濯・乾燥サービス(1~6級対象)
- 緊急通報システム設置(1~2級対象)
- 在宅リハビリ支援
- 在宅重度身体障害者訪問診査(リハビリセンターへの訪問が難しい重度身体障害者)
なお、支援の内容や対象等級は自治体によって異なるため、詳細は市区町村の福祉課で確認するようにしましょう。 出典:川崎市
障害者手帳を取得することで、助成金や交通機関の割引など、様々な金銭的な支援を受けることができます。 【医療助成金・税金の控除の例】
- 重度障害者医療費助成:障害等級1~2級が目安。入院・通院などにかかる自己負担額の助成が受けられる
- 特別障害者手当:障害等級1~2級が目安。月額28,840円が支給される。(所得制限あり)
- 税金控除(障害等級3~6級):年間27万円(所得税)年間26万円(住民税)
- 税金控除(障害等級1~2級):年間40万円(所得税)年間30万円(住民税)
出典:川崎市・厚生労働省・国税庁 【対象となる利用料の割引・免除の例】
- 公共交通機関の割引(JR・地下鉄・新幹線・都営バス・飛行機など)
- 娯楽施設の割引(映画館・水族館・遊園地など)
- 公共施設の割引・無料化(動物園・美術館など)
- NHK受信料の免除(条件を満たす場合)
- 携帯電話料金の割引(各通信事業者が提供するプランが適用)
助成制度や税控除の対象等級は自治体ごとに異なるため、申請前に自治体の福祉課で確認するようにしましょう。 また、視覚障害の症状によって就労ができないなど、社会生活に大きな影響が出ている場合、障害年金を受給できる可能性があります。 障害年金の受給は、障害者手帳の認定基準とは異なる「障害年金の認定基準」に基づく審査を受ける必要があります。 【障害年金の認定基準】
- 1級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 2級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
- 3級:身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
なお、令和7年度の障害年金の支給額は以下の通りとなっています。
月額 | 年額 | 前年度の年額 | |
障害基礎年金1級 | 86,635円 | 1,039,625円 | 1,020,000円 |
障害基礎年金2級 | 69,308円 | 831,700円 | 816,000円 |
障害厚生年金 3級(最低保障) | 51,983円 | 623,800円 | 612,000円 |
子の加算1人目(障害基礎年金に加算) | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
子の加算2人目(障害基礎年金に加算 | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
子の加算3人目(障害基礎年金に加算 | 6,650円 | 79,800円 | 78,300円 |
配偶者 加給年金(障害厚生年金に加算) | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
障害年金生活者支援給付金1級 | 6,813円 | 81,756円 | 79,656円 |
障害年金生活者支援給付金2級 | 5,450円 | 65,400円 | 63,720円 |
出典:小川早苗社会保険労務士事務所 上記の内容は毎年見直しが実施されているため、最新の情報は日本年金機構の公式サイトを確認しましょう。 出典:三重県・障害年金申請サポート
障害年金の受給事例

続いて、弱視・緑内障による障害年金の受給事例を紹介します。
弱視で障害基礎年金1級を受給できた事例
弱視によって、障害基礎年金1級の受給対象となった40代の方の事例を紹介します。 本事例の方は、生後1ヶ月時点で先天性心疾患が見つかり、手術を行いました。手術は無事に成功しましたが、その時点から視力が低かったそうです。しかし、心臓病ばかりに注目されていたことで、視力の疾患の発見が遅れてしまいました。 その後、小学校入学のタイミングで視力が低いことが指摘され、弱視と診断されました。それからしばらくは治療を行いましたが効果が見られず、そのまま治療を継続したとしても症状の改善が見込めないとのことで通院を中止しました。 視力が悪くても仕事ができるように、柔道整復師の資格を取得して仕事をしていましたが、40代で心不全を発症し入院することになりました。その際に視覚障害による障害者手帳の取得を勧められ、障障害者手帳と障害年金の申請を行いました。 結果として、身体障害者手帳1級(視覚障害)、そして障害基礎年金1級に認定され、年額約99万円を受給しました。 出典:小川早苗社会保険労務士事務所
緑内障で障害厚生年金3級を受給できた事例
緑内障によって、障害厚生年金3級の受給対象となった30代男性の事例を紹介します。 本事例の男性は、申請を行う6~7年前に眼科で緑内障と診断され、総合病院で手術を受けました。術後1年ほどは通院して経過観察を行っていましたが、仕事が忙しくなったことで通院をやめてしまいました。 それから3年ほど経ったタイミングで症状が大きく進行し、左目を失明。 家族から障害年金の受給を提案され、申請したところ、障害厚生年金3級に認定されました。結果として、年額約58万円を受給することができました。 出典:名古屋愛知障害年金サポート
弱視・緑内障が仕事に与える影響

弱視や緑内障は、視力や視野が制限されるため、業務の種類や働き方に影響を及ぼすことがあります。 たとえば、細かい文字や画面を見る作業、スピードや正確さが求められる業務は負担が大きくなる場合があります。また、視野が欠けることで人や物との接触の危険性が増すため、安全面への配慮も必要です。 ただし、視覚補助具や職場での合理的配慮を受けることで、多くの仕事を無理なく続けることができます。自分の障害の特性を正しく理解し、サポート体制が整った環境で働くことが大切です。
弱視・緑内障の人に向いてる仕事

視覚障害者の方が最も多く従事しているのは、あん摩マッサージ指圧師や鍼灸師といった国家資格が必要な専門職です。触覚や聴覚などの感覚を活かせるこれらの職種は、全盲の方でも高い技術を発揮できる代表的な仕事です。 事務職も視覚障害者におすすめの職種の一つです。拡大鏡や読み上げソフトといった支援技術を活用することで、パソコンでの資料作成や事務作業に対応できます。プログラミングなどの技術系の仕事でも、適切な環境が整えば十分に活躍が可能です。 また、音声データの文字起こしを行うブラインドライターや、点字名刺の制作など、視覚障害者ならではの特性を活かした独自の仕事もあります。どの職種を選ぶ場合でも、自分の障害の程度や特性にあった職場環境とサポート体制が整っている会社を選ぶことが重要です。 視覚障害の人に向いてる仕事については、こちらの記事「視覚障害者に向いてる仕事とは?注意点とおすすめ求人も紹介」にて詳しく解説しています。
弱視・緑内障の人におすすめの求人

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