狭心症で障害者手帳を取得するための条件・申請手順・メリットを解説

狭心症と診断されたけれど、「障害者手帳を申請できるのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。 この記事では、狭心症が障害者手帳の対象になるケースや、申請の流れ、受けられる支援についてわかりやすく解説します。
狭心症とは

まずは狭心症について、詳しく解説します。
狭心症の概要
狭心症とは、心臓に酸素を届ける冠動脈が狭くなることで、心筋に十分な血液が届かなくなり、胸の痛みなどを引き起こす病気です。これは一時的な「心筋虚血」と呼ばれる状態によって起こります。 原因の多くは、動脈の内側にコレステロールなどの脂質がたまって血管が細くなる「動脈硬化」です。発作の多くは、運動やストレスによって心臓に負担がかかったとき(労作時)や、まれに安静時にも起こります。 狭心症には症状の安定性によって2つのタイプがあります。それぞれの特徴を以下に比較表でまとめました。 <安定狭心症と不安定狭心症の違い>
特徴 | 安定狭心症 | 不安定狭心症 |
発作の誘因 | 身体活動や労作時(例:階段の昇降、運動)に発症し、安静にすると症状が軽減する傾向がある | 軽い運動や安静時にも発作が起こることがあり、症状の頻度や強度が増す傾向がある |
発作の持続時間 | 数分以内で、通常は15分未満 | 15分以上続くことがあり、症状が長引く傾向がある | 症状の安定性 | 症状のパターンが一定で予測可能 | 症状が急に変化し予測が難しい | 心筋梗塞のリスク | 比較的低いが注意が必要 | 高く、心筋梗塞の前兆とされ、緊急の対応が必要 | 治療の緊急性 | 通常は外来での管理が可能 | 入院が必要となる場合が多く、迅速な治療が求められる |
狭心症は放置すると、血流の不足が続き、心筋が壊死する「心筋梗塞」に進行する可能性があります。心筋梗塞は命に関わる緊急疾患です。早めに医師の診断を受け、必要な治療を始めることが非常に重要です。 出典:国立循環器病研究センター・恩寵財団済生会・近畿大学病院・丸岡医院
狭心症の症状
主な症状は胸の中央や左側に感じる痛み、圧迫感、締め付け感、重苦しさです。通常、症状は数分程度続き、安静にしたり、ニトログリセリンを服用すると治まることが多いです。 左腕、肩、首、顎、背中にも痛みが広がってしまうことがあります。さらに息切れ、吐き気、冷や汗、めまい、極度の疲労感などを伴うこともあります。 労作時や精神的ストレス時に症状が出現することが多いとされています。 出典:国立循環器病研究センター
狭心症の治療法
狭心症の治療は、薬物療法が基本となります。発作時の対処薬としてニトログリセリン舌下錠などの硝酸薬が用いられます。 予防薬としてβ遮断薬、カルシウム拮抗薬、長時間作用型硝酸薬などが使用されます。重症例ではカテーテル治療(経皮的冠動脈形成術やステント留置術)が行われます。 複数の冠動脈に重度の狭窄がある場合は冠動脈バイパス手術が選択されることもあります。 出典:国立循環器病研究センター
症状によっては身体障害者手帳を取得できる

狭心症自体では直接障害者手帳の対象にならないことが多いです。しかし、狭心症によって心臓機能に重度の障害が残った場合、身体障害者手帳の交付対象となる可能性があります。
障害者手帳の認定基準
障害等級の判断は、厚生労働省が定める「心臓機能障害等級表」に基づき、日常生活への制限の程度によって判断されます。 【心臓機能障害等級表(身体障害者福祉法に基づく)】
- 1級:心臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの
- 3級:心臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの
- 4級:心臓機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの
出典:厚生労働省 身体障害者手帳の交付は、医師が作成する診断書の内容だけで自動的に決まるわけではありません。診断書をもとに、各自治体の審査機関が心臓の状態や日常生活への影響を詳しく確認し、上記の等級表の基準に照らして等級を決定します。 そのため、症状の重さや日常生活でどれだけの制限があるかによって、障害の等級や交付の可否が異なります。 また等級の判定には、医学的評価としてNYHA(ニューヨーク心臓協会)の心機能分類等も参考とされます。 【NYHA分類による重症度分類】
- クラスI:身体活動に制限なし。通常の身体活動では疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛は起こらない
- クラスII:身体活動に軽度の制限あり。安静時には無症状。通常の身体活動で疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛が起こる
- クラスIII:身体活動に著しい制限あり。安静時には無症状。通常以下の身体活動で疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛が起こる
- クラスIV:安静時にも心不全症状や狭心痛があり、わずかな労作でこれらの症状が増悪する
出典:心不全のいろは NYHA分類は、心臓の病気によってどれくらい体が動かしづらくなるかを表す目安として使われます。ただし、障害者手帳の等級を決めるときには、この分類だけで判断されるわけではありません。 実際には、心臓の動き具合(心エコー検査での数値)や、血液検査の結果(BNPという数値)、ペースメーカーをつけているかどうか、そして日常生活でどれくらい困っているかなど、さまざまな情報をあわせて総合的に判断されます。 出典:池辺経営労務事務所・心臓のSOS
障害者手帳を取得する手順

狭心症で障害者手帳を申請する際には、循環器科医などの専門医による診断書が必要になります。申請に関する書類は各自治体の福祉窓口で入手できますが、自治体によってはウェブサイトからダウンロード可能な場合もあります。診断書とともに、下記の書類を準備しましょう。
- 顔写真(縦4cm × 横3cm)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑(認め印)
※準備物は区市町村によって異なるケースがあるため事前に市区町村の福祉課に確認するようにしましょう <障害者手帳の取得手順> STEP.1:主治医に相談 心臓の症状が安定していると医師が判断した時点で、身体障害者手帳申請のための診断書作成を依頼します。 STEP.2:役所に必要書類を提出して申請 診断書・意見書を受け取ったら、役所の福祉課に申請書類とともに提出します。 STEP.3:審査機関による審査 役所が申請書類を受理した後、申請書類をもとに専門機関で心臓機能障害の程度について審査が行われます。 STEP.4:手帳の発行と交付通知 審査が完了すると、役所から交付の通知が届きます。その後、役所で障害者手帳を受け取ります。 医師への相談から実際に手帳が交付されるまでは、通常2〜3ヶ月程度の期間を要します。ただし、診断書作成の状況や審査の混み具合によっては、さらに時間がかかる場合もありますので、余裕をもって手続きを進めましょう。
狭心症の人が障害者手帳を取得するメリット

続いて、狭心症の人が障害者手帳を取得するメリットを解説します。
障害者枠での就労が可能になる
身体障害者手帳を取得すると、障害者雇用での就労が可能になります。障害者雇用枠で就業することで、狭心症の症状に適した業務内容や勤務形態を調整してもらえるなど、心身への配慮のある就労環境で働けるようになります。 また、障害者雇用枠の選考は、一般の採用枠とは別枠で選考が行われるため、狭心症という健康上の課題が採用の障壁になりにくく、むしろ法定雇用率の達成を目指す企業にとっては積極的な採用対象となります。そのため、一般枠と比較して採用されやすいという利点もあります。
生活の支援が受けられる
障害者手帳を取得することで、日常生活に関する支援を受けられる場合があります。 【生活支援の例】
- 訪問看護サービス(1~2級対象)
- 寝具洗濯・乾燥サービス(1~6級対象)
- 緊急通報システム設置(1~2級対象)
- 在宅リハビリ支援
- 在宅重度身体障害者訪問診査(リハビリセンターへの訪問が難しい重度身体障害者)
なお、支援の内容や対象等級は自治体によって異なるため、詳細は市区町村の福祉課で確認するようにしましょう。
金銭的な支援が受けられる
障害者手帳を取得することで、医療費助成や手当、税制優遇、交通機関をはじめとした各種割引制度など、様々な金銭的な支援を受けることができます。 【医療費助成・税金の控除の例】
- 重度障害者医療費助成:障害等級1~2級が目安。入院・通院などにかかる自己負担額の助成が受けられる
- 特別障害者手当:障害等級1~2級が目安。月額28,840円が支給される。(所得制限あり)
- 税金控除(障害等級3~6級):年間27万円(所得税)年間26万円(住民税)
- 税金控除(障害等級1~2級):年間40万円(所得税)年間30万円(住民税)
出典:川崎市・厚生労働省・国税庁 【対象となる利用料の割引・免除の例】
- 公共交通機関の割引(JR・地下鉄・新幹線・都営バス・飛行機など)
- 娯楽施設の割引(映画館・水族館・遊園地など)
- 公共施設の割引・無料化(動物園・美術館など)
- NHK受信料の免除(条件を満たす場合)
- 携帯電話料金の割引(各通信事業者が提供するプランが適用)
助成制度や税控除の対象等級は自治体ごとに異なるため、申請前に自治体の福祉課で確認するようにしましょう。 また、狭心症によって心臓機能に重度の障害が残り、社会生活に大きな影響が出ている場合、障害年金を受給できる可能性があります。 障害年金の受給は、障害者手帳の認定基準とは異なる「障害年金の認定基準」に基づく審査を受ける必要があります。 【障害年金の認定基準】
- 1級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 2級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
- 3級:身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
なお、令和7年度の障害年金の支給額は以下の通りとなっています。
月額 | 年額 | 前年度の年額 | |
障害基礎年金1級 | 86,635円 | 1,039,625円 | 1,020,000円 |
障害基礎年金2級 | 69,308円 | 831,700円 | 816,000円 |
障害厚生年金 3級(最低保障) | 51,983円 | 623,800円 | 612,000円 |
子の加算1人目(障害基礎年金に加算) | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
子の加算2人目(障害基礎年金に加算 | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
子の加算3人目(障害基礎年金に加算 | 6,650円 | 79,800円 | 78,300円 |
配偶者 加給年金(障害厚生年金に加算) | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
障害年金生活者支援給付金1級 | 6,813円 | 81,756円 | 79,656円 |
障害年金生活者支援給付金2級 | 5,450円 | 65,400円 | 63,720円 |
出典:小川早苗社会保険労務士事務所 上記の内容は毎年見直しが実施されているため、最新の情報は日本年金機構の公式サイトを確認しましょう。 出典:三重県・障害年金申請サポート
狭心症で障害厚生年金3級を受給できた事例

労作性狭心症により障害厚生年金3級の受給対象となった50代男性の事例を紹介します。 こちらの男性は、会社の健康診断時に心電図の異常が見つかりましたが、精密検査を受けた結果、治療の必要性がないと判断され、様子見の状態でした。 しかし、その2年後に、動悸やめまいの症状が強く現れるようになり、再度受診したところ、労作性狭心症の診断を受け、2度のステント留置術、ペースメーカー埋込術を受けることになりました。 タクシードライバーの職に就いていましたが、突然の発作に襲われる等の理由により退職。 狭心症による症状が社会生活に大きな影響を及ぼしていたことで、障害厚生年金3級に認定され、年額で約65万円、遡及分103万円を受給しました。 出典:関東障害年金相談センター
狭心症が仕事に与える影響

狭心症の症状が、仕事に与える可能性のある影響について、解説します。
発作リスクに配慮した働き方が必要
狭心症は心臓に負担がかかることで発作を起こす可能性があるため、身体的に激しい労働や強いストレスを伴う業務は避けることが推奨されます。 また、長時間労働や不規則な勤務も症状を悪化させる原因になり得るため、定期的な休憩や安定した勤務体制が重要です。 万が一、勤務中に胸の痛みや不調を感じた際にすぐ休めるよう、職場の理解やサポート体制があることも大切です。
通勤・通院・職場環境への工夫も有効
通勤時の混雑や長時間の移動が体への負担になる場合は、時差出勤やテレワークを活用することで症状のコントロールがしやすくなります。 また、狭心症の管理には定期的な通院や薬の服用が欠かせません。そのため、通院のための休暇が取得しやすい環境が整っている職場であることも、安心して働き続けるうえで大切なポイントです。
狭心症を発症した人におすすめの求人

ジョンソン・エンド・ジョンソン
【求人情報】
- 職種:事務系オープンポジション(障害者枠)
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狭心症の人の転職/就職には転職エージェントがおすすめ

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- 就職や転職におけるキャリアカウンセリング
- 求人の紹介
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