キーンベック病で障害者手帳を取得するための条件・申請手順・メリットを解説

手首の中央にある月状骨が血行不全により壊死する疾患であるキーンベック病。 本記事では、キーンベック病によって障害者手帳を取得できるかどうかについて、具体的な条件や申請手順、取得するメリットを解説します。
キーンベック病とは

まずはキーンベック病について、詳しく解説します。
キーンベック病の概要
キーンベック病は手首中央部にある月状骨が血行不全により壊死・扁平化する疾患で、月状軟化症とも呼ばれています。月状骨は周囲が軟骨に囲まれているため血流が乏しく、一度障害が起きると壊死しやすい特徴があります。 主に20〜30代の男性、特に手をよく使う職業の人に多く発症しますが、女性や高齢者にも見られることがあります。原因は不明ですが、月状骨の微細骨折や橈骨と尺骨の長さのバランス異常など、解剖学的特徴が関連すると考えられています。 出典:Medical Note・溝口病院
キーンベック病の症状
初期段階では自覚症状がないか軽微なことがあり、発見が遅れる場合があります。手首に痛みと腫れが生じ、特に手を使用した後に症状が強くなります。痛みは最初は手首の中心部(月状骨部分)だけに限られますが、進行すると手首全体に広がります。 それにより、握力が低下し、手首の動きが制限されます。また、手首を動かすと痛む(運動痛)のが特徴で、進行すると安静時にも痛みが現れます。病気が進行すると慢性的な手首の腫れや骨の変形が生じ、日常生活にも支障をきたします。末期になると月状骨周囲の手根骨にも影響が及び、変形性関節症へと進行します。 変形性関節症にまで進行すると、手首の関節がさらに変形して硬くなり、慢性的な痛みや腫れが続くだけでなく、物を持ったり、ボタンを留めたりといった日常の細かい動作も難しくなることがあります。そのため、重度になる前に適切な診断と治療を受けることが重要です。 出典:Medical Note・溝口病院・中村整形外科
キーンベック病の治療法
キーンベック病は進行度によって、Lichtman(リヒトマン)分類のステージI〜IVに分けられ、治療方針もそれに応じて異なります。
ステージ | 治療内容 |
I〜II(初期) | 装具・ギプスによる固定、鎮痛薬などによる保存療法 |
III〜IV(進行) | 骨切り術・骨移植術・月状骨摘出術などの手術療法が検討される |
進行を防ぐためには、早期発見・早期治療が非常に重要です。手外科を専門とする整形外科医への受診が推奨されます。 出典:三国ゆう整形外科・横山医院・中村整形外科皮フ科
症状によっては障害者手帳を取得できる

キーンベック病が進行し、手首(手関節)の機能に著しい障害が残った場合、身体障害者手帳(肢体不自由)の交付対象となることがあります。
障害者手帳の認定基準
キーンベック病による障害者手帳の認定においては、以下のような条件で判断されます。
- 関節の可動域制限(動かせる角度の低下)
- 筋力の著しい低下
- 痛みや変形により日常生活に支障があること
たとえば、関節の可動範囲(可動域)が、健常者と比較して2分の1以下に制限されている場合は「機能の全廃」、3分の2以下に制限されている場合は「著しい障害」とみなされ、身体障害者手帳の認定対象となる可能性があります。 【上肢機能障害における障害等級の一例(厚生労働省基準)】
- 1級:両上肢の機能を全廃したもの
- 2級:両上肢の機能の著しい障害
- 3級:一上肢の機能の著しい障害
- 4級:一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうち、いずれか一関節の機能を全廃したもの
- 5級:一上肢の肩関節、肘関節又は手関節のうち、いずれか一関節の機能の著しい障害
- 6級:一上肢のおや指の機能の著しい障害
※「機能の全廃」とは、完全に動かせない、あるいは実用的に使用できない状態を指します。 出典:厚生労働省
障害者手帳を取得する手順
キーンベック病で障害者手帳を申請するには、整形外科医による診断書が必要です。手帳申請に必要な書類は各自治体の福祉窓口で入手できます。申請時に必要な書類は以下の通りです。
障害者手帳を取得する手順

キーンベック病で障害者手帳を申請するには、整形外科医による診断書が必要です。手帳申請に必要な書類は各自治体の福祉窓口で入手できます。申請時に必要な書類は以下の通りです。
- 顔写真(縦4cm × 横3cm)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑(認め印)/li>
<障害者手帳の取得手順> STEP.1:主治医に相談 症状がある程度固定されたと判断されたタイミングで、主治医に申請用の診断書を作成してもらいます。 STEP.2:役所に必要書類を提出して申請 診断書・意見書を受け取ったら、役所の福祉課に申請書類とともに提出します。 STEP.3:審査機関による審査 役所が申請書類を受理した後、申請書類をもとに専門機関で障害の程度について審査が行われます。 STEP.4:手帳の発行と交付通知 審査が完了すると、役所から交付の通知が届きます。その後、役所で障害者手帳を受け取ります。 主治医への相談から手帳が手元に届くまで、一般的には2〜3か月ほどかかります。ただし、診断書作成の期間や審査の混雑状況によっては、3か月以上かかることもあるため、取得を希望する場合は早めに行動するようにしましょう。
キーンベック病の人が障害者手帳を取得するメリット

キーンベック病により手の機能に障害が残った場合、障害者手帳を取得することで様々な支援を受けられます。ここではそのメリットを説明します。
障害者枠での就労が可能になる
手帳取得により障害者雇用枠での就職活動や転職活動ができるようになります。障害者雇用枠で就業することで、キーンベック病による手首の障害に配慮した職場環境で働くことができ、業務内容や勤務時間の調整など合理的配慮を受けられます。 また、障害者雇用枠は法定雇用率の達成を目的としているため、障害があることが採用において不利にならず、むしろ一般枠よりも採用確率が高まる利点があります。
生活の支援が受けられる
障害者手帳を取得することで、日常生活に関する支援を受けられる場合があります。 【生活支援の例】
- 訪問看護サービス(1~2級対象)
- 寝具洗濯・乾燥サービス(1~6級対象)
- 緊急通報システム設置(1~2級対象)
- 在宅リハビリ支援
- 在宅重度身体障害者訪問診査(リハビリセンターへの訪問が難しい重度身体障害者)
なお、支援の内容や対象等級は自治体によって異なるため、詳細は市区町村の福祉課で確認するようにしましょう。
金銭的な支援が受けられる
障害者手帳を取得することで、助成金や交通機関の割引など、様々な金銭的な支援を受けることができます。 【助成金・税金の控除の例】
- 重度障害者医療費助成:障害等級1~2級が目安。入院・通院などにかかる自己負担額の助成が受けられる
- 特別障害者手当:障害等級1~2級が目安。月額28,840円が支給される。(所得制限あり)
- 税金控除(障害等級3~6級):年間27万円(所得税)年間26万円(住民税)
- 税金控除(障害等級1~2級):年間40万円(所得税)年間30万円(住民税)
出典:川崎市・厚生労働省・国税庁 【対象となる利用料の割引・免除の例】
- 公共交通機関の割引(JR・地下鉄・新幹線・都営バス・飛行機など)
- 娯楽施設の割引(映画館・水族館・遊園地など)
- 公共施設の割引・無料化(動物園・美術館など)
- NHK受信料の免除(条件を満たす場合)
- 携帯電話料金の割引(各通信事業者が提供するプランが適用)
助成制度や税控除の対象等級は自治体ごとに異なるため、申請前に自治体の福祉課で確認するようにしましょう。 また、潰瘍性大腸炎の症状によって就労ができないなど、社会生活に大きな影響が出ている場合、障害年金を受給できる可能性があります。 障害年金の受給は、障害者手帳の認定基準とは異なる「障害年金の認定基準」に基づく審査を受ける必要があります。 【障害年金の認定基準】
- 1級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 2級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
- 3級:身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
なお、令和7年度の障害年金の支給額は以下の通りとなっています。
月額 | 年額 | 前年度の年額 | |
障害基礎年金1級 | 86,635円 | 1,039,625円 | 1,020,000円 |
障害基礎年金2級 | 69,308円 | 831,700円 | 816,000円 |
障害厚生年金 3級(最低保障) | 51,983円 | 623,800円 | 612,000円 |
子の加算1人目(障害基礎年金に加算) | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
子の加算2人目(障害基礎年金に加算 | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
子の加算3人目(障害基礎年金に加算 | 6,650円 | 79,800円 | 78,300円 |
配偶者 加給年金(障害厚生年金に加算) | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
障害年金生活者支援給付金1級 | 6,813円 | 81,756円 | 79,656円 |
障害年金生活者支援給付金2級 | 5,450円 | 65,400円 | 63,720円 |
出典:小川早苗社会保険労務士事務所 上記の内容は毎年見直しが実施されているため、最新の情報は日本年金機構の公式サイトを確認しましょう。 出典:三重県・障害年金申請サポート
キーンベック病が仕事に与える影響

キーンベック病は手首の機能に障害をもたらすため、仕事にさまざまな影響を与える可能性があります。 キーンベック病の症状によって、以下のような作業や仕事に影響が出やすくなります。
- 重いものを持ち上げる作業
- 手首を回転させる動作が多い仕事(ドライバーやレンチを使う作業など)
- 繰り返し手首に負担をかける作業(キーボード入力など)
- 手首に衝撃が加わる作業(ハンマーでの打撃など)
- 精密な手作業が必要な職種
症状の程度や進行状況によっては、仕事の継続が難しくなる場合もあります。そのような場合は、職場での配慮や業務内容の調整、または職種の変更を検討する必要があるかもしれません。 キーンベック病と診断された場合、職場で以下のような配慮を受けることで、症状の悪化を防ぎながら就労を続けられる可能性があります。
- 手首への負担が少ない業務への配置転換
- 作業環境の調整
- 補助器具の導入(手首サポーターや特殊なマウス、キーボードなど)
- 業務量の調整や時短勤務の検討
障害者手帳を取得している場合は、合理的配慮を受ける権利が法的に保障されていますので、必要な配慮について雇用主へ事前に相談することが重要です。
キーンベック病を発症した人におすすめの求人

ジョンソン・エンド・ジョンソン
【求人情報】
- 職種:事務系オープンポジション(障害者枠)
- 雇用形態:正社員
- 業務内容:入社~異動~退職に伴う人事関連手続き全般、ファイリング・人事データの抽出・提供、社内問い合わせ対応など、配属ポジションによって決定
- 給与・年収:3,500,000円~4,500,000円
- 勤務地:東京本社・在宅とのハイブリッド勤務可能
- 応募資格:基礎的なPCスキル(Excel、Word、Powerpoint)
こちらは、ジョンソン・エンド・ジョンソンが募集している事務職の求人です。事務職のオープンポジションとなっているため、希望職種や業務経験・障害内容に応じて最適なポジションへ配属されます。 障害に負担のかかる業務を避けながら働くことができるため、無理のない範囲でキャリアアップを目指したい人におすすめの求人です。 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の求人はこちらからご覧ください。
NEC航空宇宙システム
【求人情報】
- 職種:エンジニア(障害者枠)
- 雇用形態:正社員
- 業務内容:防衛・航空、宇宙分野等に関するシステムエンジニア、ネットワークエンジニア、ソフトウェアエンジニア
- 給与・年収:3,200,000円~5,280,000円
- 勤務地:東京本社・福岡支社・札幌支社・仙台支社
- 応募資格:ソフトウェア開発経験3年以上
こちらはNEC航空宇宙システムが募集しているエンジニアの求人です。 システムエンジニア、ソフトウェアエンジニア、ネットワークエンジニアいずれかのポジションで、システム開発やソフトウェア開発を担当します。 応募条件として、3年以上のソフトウェア開発経験が求められますが、その分エンジニアとしてさまざまな経験を積むことができます。 NEC航空宇宙システム株式会社の求人については、こちらからご覧ください。
LINEヤフー
【求人情報】
- 職種:事務職(障害者枠)
- 雇用形態:正社員
- 業務内容:管理部門での事務業務(障害特性に応じて決定)
- 給与・年収:2,850,000円~4,150,000円
- 勤務地:完全在宅
- 応募資格:基本的なPC操作・事務スキル(Word、Excel、メール、チャットツール
こちらはLINEヤフー株式会社が募集している、事務ポジションの求人です。 人事部などの管理部門での事務業務の中で、障害特性に合った業務を担当します。そのため、無理のない範囲で対応可能な業務を担当でき、心身への負担を軽減しながら働くことができます。 また、完全在宅勤務が可能となっているため、通勤に負担を感じる人におすすめの求人です。 LINEヤフー株式会社の求人はこちらからご覧ください。
キーンベック病の人の就職/転職には転職エージェントがおすすめ

キーンベック病で手首に障害を抱える方の転職・就職では、プロによる就業サポートを受けることで、より転職/就職の成功確率を高めることができます。また、障害者雇用専門の転職エージェントを利用すれば、手首の負担が少ない職場や配慮が得られる企業をピンポイントで探せます。 【転職エージェントの支援内容】
- 就職や転職におけるキャリアカウンセリング
- 求人の紹介
- 面接の練習
- 選考書類の作成サポート
- 就職や転職後の定着支援
転職エージェントのサービスは無料で利用でき、キーンベック病の症状や制限に適した職場環境や業務内容の求人を紹介してもらえます。一般公開されていない好条件の求人に出会える可能性も高く、就職後のミスマッチを防げるメリットがあります。 障害者専門の転職エージェントである障害者雇用バンクでは、幅広い障害者枠の求人を取り扱っており、年収重視のキャリア型求人から、働きやすさ重視の特例子会社求人まで、さまざまな求人の紹介を受けることができます。(※障害者手帳取得者または取得予定者が対象) 障害者枠で選考を受ける場合、障害者雇用バンクのサポートを受けることで、
- 難病を持った人の入社実績が豊富な企業を優先して紹介してくれる
- 企業側へどのように伝えると好印象を与えられるかを教えてくれる
- 面接後にキャリアアドバイザーからあなたの良さを企業側にプッシュしてくれる
など、希望するキャリアを実現するための徹底した就業サポートを受けることができます。 障害者雇用バンクの転職サポート・就職サポートは、すべて無料でご利用いただけますので、転職や就職を検討している方は、ぜひこちらより会員登録をしてみてください。
日本最大級の障害者向け求人サイト
「障害者雇用バンク」

数多くある障害者の転職サイトのなかでも、日本最大級の障害者向け求人情報を提供する「障害者雇用バンク」は業界初「人材紹介の求人情報データベースとハローワークの求人データベースの両方の情報の提供」障害者の転職をトータルで支援します。
より積極的に募集される障害者求人情報と、公的機関であるハローワークの求人情報を一つのサイトでまとめて検索することができるだけでなく、カウンセラーとのWeb面談などのサービスも。在宅のままスマートフォン1台で、自分に合った仕事探しが可能です。
無料登録は3分程度で手軽にできるので、まずは登録するところから始めてみてはいかがでしょうか?