潰瘍性大腸炎で障害者手帳を取得するための条件・等級表・申請手順を解説

大腸の粘膜に炎症が起こることで、下痢や腹痛など様々な症状が発現する指定難病である潰瘍性大腸炎。 本記事では、潰瘍性大腸炎の人が障害者手帳を取得するための条件や手順について、具体例を挙げながら解説します。
潰瘍性大腸炎とは

まずは潰瘍性大腸炎について解説します。
潰瘍性大腸炎の概要
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こることで、粘血便や下痢、腹痛といった症状が現れる病気で、指定難病に該当します。大腸の中でも、出口に近い直腸から奥に向かって連続した部位の粘膜に、傷やただれが生じます。 潰瘍性大腸炎には、活動期と寛解期の病期があり、腸炎症状が出ている期間を活動期、症状が落ち着いている時期を寛解期といいます。しかし慢性疾患であるため、人によってはこれらの期間を繰り返すことがあります。 潰瘍性大腸炎に近い病気にクローン病があります。潰瘍性大腸炎が大腸にのみ病変が発生するのに対し、クローン病は消化管全てに病変が発生する可能性があります。 クローン病については、こちらの記事「クローン病の人に向いてる仕事・おすすめの求人を紹介」にて詳しく解説しています。 出典:IBDステーション
潰瘍性大腸炎の症状
主な症状としては、粘血便や血便、下痢、腹痛が挙げられます。年血便とは、体から分泌される粘り気のある粘液を含む便のことを指します。 さらに症状がひどい場合は、便が出ず血液のみが排泄されることもあります。 下痢の症状が強い場合は、1日に10回以上の下痢を繰り返すこともあり、腹痛の症状がある場合はお腹を押される痛みや、刺すような鋭い痛みを感じることもあります。 また、潰瘍性大腸炎を発症し、炎症が悪化したり長期化したりした場合は、合併症を起こすことがあります。 潰瘍性大腸炎に伴う合併症は、大きく「腸管合併症」と「腸管外合併症」の2つに分けられます。 腸管合併症では、大量の下血や大腸がんを引き起こすことがあり、腸管外合併症では、関節炎や皮膚の異常などが見られることがあります。 出典:IBDステーション
潰瘍性大腸炎の治療法
潰瘍性大腸炎の治療では、腸の炎症を抑え、症状が落ち着いた状態(寛解期)をできるだけ長く維持することが目標となります。 潰瘍性大腸炎では、症状が出ている活動期には、症状を抑えて落ち着かせる治療を行い、症状が落ち着いた寛解期には、それを維持する治療を続けます。 基本的には薬による治療が中心ですが、薬が効かない場合や症状がひどくなった場合には、大腸をすべて摘出する手術が必要になることもあります。その際には、人工肛門を作る可能性もあります。 出典:IBDステーション・難病情報センター
症状によっては障害者手帳を取得できる

潰瘍性大腸炎によって直腸や排便機能に重い障害が残った場合は、「内部障害(排泄機能障害)」に該当し、身体障害者手帳の対象になる可能性があります。 ただし、障害者手帳を取得するためには、単に病気を発症しているだけではなく、その病気によって実際に日常生活に支障をきたすレベルの障害があることが認定される必要があります。 そのため、たとえ潰瘍性大腸炎の診断を受けていても、症状が軽度で日常生活に大きな支障がない場合は、障害者手帳の対象とはなりません。 一方で、病状が悪化して直腸や排便機能に深刻な障害が生じた場合には、「直腸機能障害」として認定され、手帳取得の対象となる可能性があります。 出典:厚生労働省
直腸機能障害の障害認定基準

【直腸機能障害の障害認定基準】
- 1級:ぼうこう又は直腸の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの
- 3級:ぼうこう又は直腸の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの
- 4級:ぼうこう又は直腸の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの
出典:東京福祉局
障害者手帳を取得する手順

障害者手帳の申請には、主治医が作成した診断書が必要です。申請に必要な書類は、役所の福祉課で取得できますが、自治体によってはオンラインでダウンロードできる場合もあります。 申請時には、診断書のほかに以下の書類も必要です。
- 顔写真(縦4cm × 横3cm)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 印鑑(認め印)
<障害者手帳の取得手順> STEP.1:主治医に相談 症状がある程度固定されたと判断されたタイミングで、主治医に申請用の診断書を作成してもらいます。 STEP.2:役所に必要書類を提出して申請 診断書・意見書を受け取ったら、役所の福祉課に申請書類とともに提出します。 STEP.3:審査機関による審査 役所が申請書類を受理した後、申請書類をもとに専門機関で障害の程度について審査が行われます。 STEP.4:手帳の発行と交付通知 審査が完了すると、役所から交付の通知が届きます。その後、役所で障害者手帳を受け取ります。 主治医への相談から手帳が手元に届くまで、一般的には2〜3か月ほどかかります。ただし、診断書作成の期間や審査の混雑状況によっては、3か月以上かかることもあるため、早めの申請が推奨されています。 出典:多摩市・日野市
潰瘍性大腸炎の人が障害者手帳を取得するメリット

続いて、潰瘍性大腸炎の人が障害者手帳を取得するメリットについて、具体例を挙げながら解説します。
障害者枠での就労が可能になる
障害者手帳を取得すると、障害者枠での就労が可能になります。 障害者枠での採用となると、業務内容や勤務時間の調整など、障害に対する合理的配慮を受けながら働けるようになるため、就労による心身への負担を軽減できます。 また、障害者枠は一般枠とは採用枠が異なり、障害者を採用することを前提としているた め、障害を持っていることが選考において不利に働くことはありません。そのため、一般枠と比較して採用されやすいこともメリットとして挙げられます。
生活の支援が受けられる
障害者手帳を取得することで、日常生活に関する支援を受けられる場合があります。 【生活支援の例】
- おむつ支給
- 寝具洗濯・乾燥サービス(1~6級)
- 緊急通報システム設置(1~2級)
- 在宅リハビリ支援
出典:川崎市 上記のように、条件を満たすことで様々な支援を受けることが可能で、生活の負担を軽減することができます。
金銭的な支援が受けられる
障害者手帳を取得することで、助成金や交通機関の割引など、様々な金銭的な支援を受けることができます。 【助成金・税金の控除の例】
- 重度障害者医療費助成:障害等級1~2級が目安。入院・通院などにかかる自己負担額の助成が受けられる
- 特別障害者手当:障害等級1~2級が目安。月額28,840円が支給される。(所得制限あり)
- 税金控除(障害等級3~6級):年間27万円(所得税)年間26万円(住民税)
- 税金控除(障害等級1~2級):年間40万円(所得税)年間30万円(住民税)
出典:川崎市・厚生労働省・国税庁 【対象となる利用料の割引・免除の例】
- 公共交通機関の割引(JR・地下鉄・新幹線・都営バス・飛行機など)
- 娯楽施設の割引(映画館・水族館・遊園地など)
- 公共施設の割引・無料化(動物園・美術館など)
- NHK受信料の免除(条件を満たす場合)
- 携帯電話料金の割引(各通信事業者が提供するプランが適用)
助成制度や税控除の対象等級は自治体ごとに異なるため、申請前に自治体の福祉課で確認するようにしましょう。 また、潰瘍性大腸炎の症状によって就労ができないなど、社会生活に大きな影響が出ている場合、障害年金を受給できる可能性があります。 障害年金の受給は、障害者手帳の認定基準とは異なる「障害年金の認定基準」に基づく審査を受ける必要があります。 【障害年金の認定基準】
- 1級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 2級:身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
- 3級:身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの
なお、令和7年度の障害年金の支給額は以下の通りとなっています。
月額 | 年額 | 前年度の年額 | |
障害基礎年金1級 | 86,635円 | 1,039,625円 | 1,020,000円 |
障害基礎年金2級 | 69,308円 | 831,700円 | 816,000円 |
障害厚生年金 3級(最低保障) | 51,983円 | 623,800円 | 612,000円 |
子の加算1人目(障害基礎年金に加算) | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
子の加算2人目(障害基礎年金に加算 | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
子の加算3人目(障害基礎年金に加算 | 6,650円 | 79,800円 | 78,300円 |
配偶者 加給年金(障害厚生年金に加算) | 19,941円 | 239,300円 | 234,800円 |
障害年金生活者支援給付金1級 | 6,813円 | 81,756円 | 79,656円 |
障害年金生活者支援給付金2級 | 5,450円 | 65,400円 | 63,720円 |
出典:小川早苗社会保険労務士事務所 上記の内容は毎年見直しが実施されているため、最新の情報は日本年金機構の公式サイトを確認しましょう。 出典:三重県・障害年金申請サポート
潰瘍性大腸炎で障害厚生年金3級を受給できた事例

潰瘍性大腸炎により、障害厚生年金3級の受給対象となった30代男性の事例を紹介します。 こちらの男性は、腹部の慢性的な痛みや、血便、軟便の傾向がありました。2年ほど症状が続いたことで検査を受けた結果、潰瘍性大腸炎と診断されました。 飲食店に勤務しており、立ち仕事が辛い状況が続いたため、障害年金の受給申請を行いました。実際に収入があったこともあり、障害年金の受給は難しいのではと考えていましたが、結果的に障害厚生年金3級に認定され、年額で約174万円を受給することができました。 出典:神奈川中央障害年金センター
潰瘍性大腸炎が仕事に与える影響

潰瘍性大腸炎を発症することで、腹痛や下痢によって仕事に影響が出ることがあります。 腹痛の症状がある場合、肉体労働や立ち仕事を継続的に行うことが難しくなります。また、デスクワークであっても、痛みによって業務に集中できなくなる可能性があります。 下痢の症状が強い場合、ドライバーや接客業など、頻繁にトイレに行くことが難しい仕事をすることは難しくなります。また、打ち合わせなどが多い仕事をしている場合も負担に感じる可能性があります。 一方で、症状による影響を緩和しやすい職種に就業したり、働き方や職場環境を工夫することで、無理なく仕事を続けることも可能です。 以下では、潰瘍性大腸炎の人におすすめの求人を紹介します。
潰瘍性大腸炎の人におすすめの求人

ジョンソン・エンド・ジョンソン
【求人情報】
- 職種:オープンポジション(障害者枠)
- 雇用形態:正社員
- 業務内容:入社~異動~退職に伴う人事関連手続き全般、ファイリング・人事データの抽出・提供、社内問い合わせ対応など、配属ポジションによって決定
- 給与・年収:3,500,000円~4,500,000円
- 勤務地:東京本社・在宅とのハイブリッド勤務可能
- 応募資格:基礎的なPCスキル(Excel、Word、Powerpoint)
こちらは、ジョンソン・エンド・ジョンソンが募集している事務職の求人です。 オープンポジションでの募集のため、経験や希望に応じて、適切なポジションに配属されます。そのため、障害に負担のかかる業務をできる限り避けながら働くことができます。 また、在宅勤務も可能なため、業務中であっても自由に自宅のトイレを利用できるようになり、心身的な負担を軽減することができます。 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の求人はこちらからご覧ください。
LINEヤフー
【求人情報】
- 職種:事務職(障害者枠)
- 雇用形態:正社員
- 業務内容:管理部門での事務業務(障害特性に応じて決定)
- 給与・年収:2,850,000円~4,150,000円
- 勤務地:完全在宅
- 応募資格:基本的なPC操作・事務スキル(Word、Excel、メール、チャットツール等)
こちらはLINEヤフー株式会社が募集している、事務ポジションの求人です。 人事部などの管理部門での事務業務の中で、障害特性に応じた業務を無理のない範囲で担当することができます。 また、こちらの求人も在宅勤務が可能なため、業務中や通勤中のトイレに関する問題を気にする必要がなくなり、心身への負担を抑えながら働くことができます。 LINEヤフー株式会社の求人はこちらからご覧ください。
LAVA International
【求人情報】
- 職種:Webデザイナー(障害者枠)
- 雇用形態:正社員
- 業務内容:メインビジュアル、バナー、ランディングページなど、社内で発生するWebデザイン業務全般
- 給与・年収:5,040,000円~6,020,000円
- 勤務地:東京本社
- 応募資格 ・Webデザインの実務経験が3年以上ある方 ・プロダクション、もしくはインハウスでの制作経験がある方 ・Adobe Photoshop、XD、Illustratorなどデザインツールの使用経験
こちらは株式会社LAVA Internationalが募集しているWebデザイナーの求人です。 社内で発生する様々なWebデザイン業務を担当することができるため、Webデザイナーとしてキャリアアップを目指す人に最適な求人です。応募条件として3年以上の実務経験が求められますが、給与水準も高く、Webデザイナーの経験が豊富な人には非常におすすめな求人です。 株式会社LAVA Internationalの求人はこちらからご覧ください。
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