うつ病で自己都合退職しても失業保険は受け取れる?受給方法や他の金銭的支援を紹介
退職後の生活を支えるものとなる大切な失業保険。しかし、この失業保険は、受け取れる場合と受け取れない場合があります。 今回は、うつ病が原因で退職した場合失業保険に関するルールについて、詳しく解説します。
失業保険とは?
失業保険とは、仕事を退職した人を対象とした制度で、正式には雇用保険と呼ばれます。 退職により収入がなくなってしまうことの対策として、一定の条件を満たすことで原則1年間、お金の給付が受けられるため、心身の負担を軽減しながら、時間をかけて転職活動を行えます。 しかし、失業保険は誰でも退職すれば受け取れるというものではなく、受給するためには下記の条件を両方満たしている必要があります。
- 「失業の状態」である
- 一定以上の「被保険者期間」がある
「失業の状態」とは、働く意思や能力があり転職活動をしているにも関わらず仕事が決まらず働けていない状況のことをいいます。 「被保険者期間」については、退職理由などによって異なりますが、自己都合退職者の場合は「離職日以前の2年間で、12カ月以上の雇用保険への加入期間があること」とされています。 失業保険の受給者は「一般の離職者(=自己都合退職者)」「特定受給資格者」「特定理由離職者」「就職困難者」の4つに分類され、うつ病が原因となり退職した場合は、「特定理由離職者」もしくは「就職困難者」に該当します。
一般の離職者(自己都合退職者)
自己都合退職者は、自分の意思で会社側へ退職を伝え、会社を離れた人のことを指し、大半の人はここに分類されます。 自己都合退職者が失業保険を受け取るための条件である被保険者期間は前述の通り、 「離職日以前の2年間で、12カ月以上」とされています。
特定受給資格者(会社都合退職者)
会社側に退職の理由(ハラスメントなど)があり、退職することになった場合は、この特定受給資格者に該当します。 特定受給資格者の被保険者期間の条件は、 「離職日以前の1年間で、通算6ヶ月以上」とされています。
特定理由離職者
うつ病の発症など、「正当な理由」の要件に当てはまる理由で自己都合退職をした場合は、特定理由離職者に該当します。 被保険者期間の条件は、特定受給資格者と同様に、 「離職日以前の1年間で、通算6ヶ月以上」とされています。
就職困難者
身体障害や精神障害などの障害や、社会的な事情により就職が著しく阻害されている状態の人は、この就職困難者に該当します。 被保険者期間の条件は、上記と同様に、 「離職日以前の1年間で、通算6ヶ月以上」とされています。 就職困難者を対象とした失業保険については、こちらの記事「障害者専用の失業保険とは?申請方法や受給金額を徹底解説!」にて詳しく解説しています。
うつ病を発症していても失業保険は受け取れる?
うつ病が理由で退職したとしても、条件を満たせば失業保険は受け取れます。具体的に解説します。
「働ける状態」であれば受給できる
失業保険を受け取るためには「失業の状態」であることが条件です。 そのため、うつ病を発症していたとしても、就労できる状態であれば失業保険の対象となります。 反対に、うつ病の症状が重く就労ができない状況の人や、治療を優先するために転職活動を行わないという人の場合は、失業保険の受給対象にはならないため注意しましょう。
自己都合退職でも受給できる
自己都合退職でも、先ほど紹介した2つの条件を満たしていれば失業保険の対象となります。 さらに、うつ病が理由で自己都合退職をした場合は、「特定理由離職者」もしくは「就職困難者」に該当するため、一般的な自己都合退職をした人と比較しても受給要件の緩和や受給制限期間の免除などの優遇措置を受けられます。
【退職理由別】被保険者期間の条件と受給期間の違い
【受給期間:自己都合退職】※表の日数は受給可能な日数を指しています
被保険者期間 | 半年以上1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
65歳未満 | なし | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
【受給期間:特定受給資格者】※表の日数は受給可能な日数を指しています
被保険者期間 | 半年以上1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
29歳未満 | なし | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
30歳以上34歳未満/td> | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35以上44歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45以上59歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60以上64歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
【受給期間:特定理由離職者】※表の日数は受給可能な日数を指しています
被保険者期間 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
全年齢 | なし | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
【受給期間:就職困難者】※表の日数は受給可能な日数を指しています
被保険者期間 | 6ヶ月〜12ヶ月 | 12ヶ月以上 |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳以上65歳未満 | 150日 | 360日 |
失業保険の受給金額
失業保険の受給金額は以下のように計算されます。 (離職前6ヶ月の給与の総支給額の合計÷180)×給付率=基本手当日額 給付率は賃金日額(※1)や年齢に応じて異なり、50〜80%が適用されます。 給与が低かった人ほど、給付率は高くなります。 ※1「離職前6ヶ月の給与の総支給額の合計÷180」したものを「賃金日額」と呼びます 賃金日額や年齢によって、給付率は50〜80%変化するため、ご自身の賃金日数と年齢を以下に当てはめて試算してみましょう。 <賃金日額と年齢ごとの給付率の違い>
50% | 50%〜80% | 80% | |
30歳未満 | 12,240円〜13,520円 | 4,970円〜12,240円 | 2,577円〜4,970円 |
30以上45歳未満 | 12,240円〜15,020円 | 4,970円〜12,240円 | 2,577円〜4,970円 |
45以上60歳未満 | 12,240円〜16,530円 | 4,970円〜12,240円 | 2,577円〜4,970円 |
60歳以上65歳未満 | 11,000円〜15,770円以下(45%) | 4,970円〜11,000円(45%〜80%) | 2,577円〜4,970円 |
出典:厚生労働省 注意すべき点として、受給額には年齢によって上限金額が設定されているため、場合によっては全額受け取れないこともあります。 【基本手当日額の上限額】
- 30歳未満:6,835円
- 30歳以上45歳未満:7,595円
- 45歳以上60歳未満:8,355円
- 60歳以上65歳未満:7,177円
【例:30歳で年収400万円(直近6ヶ月の給与の合計が200万円・被保険者期間が5年以上10年未満)の特定理由離職者の場合(給付率65%で計算)】 (200万÷180)×65%=7222 この計算の通り 7,222円が基本手当日額となります。そして、こちらの例の場合の受給期間を前述の「【退職理由別】被保険者期間の条件と受給期間の違い」の表に当てはめると90日間となります。 7,222円×90日=649,980円 結果として満額の失業保険を受け取った場合、受給期間である90日間の合計受給金額は649,980円となります。
退職をしてから失業保険を受け取るまでの流れ
退職をしてから失業保険を受け取るまでの流れを解説します。
病院を受診しうつ病の診断を受ける
うつ病を退職理由に据える場合、正式にうつ病であると診断されている必要があります。 うつ病を退職理由とせずに自己退職する手段ももちろんありますが、その場合は前述の通り、受給要件の緩和や受給制限期間の免除などの優遇措置を受けることはできません。 うつ病を退職理由として受給要件の緩和や受給制限期間の免除などの優遇措置を受けたい場合は、まずは心療内科や精神科を受診し、自分の症状について相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。 その後の手続きで診断書の提出を求められることもあるので、診断書についてもその場で相談するようにしましょう。
会社で退職手続きを行う
会社側に退職の意図を伝え、退職手続きを行い、退職届を提出します。 退職時のルールは会社によって異なる場合がありますが、基本的に上司に相談し、退職届を提出する流れになります。 また失業保険の手続きには会社から発行される離職票も必要になります。離職票は退職時に会社側へ発行を希望すれば受け取け取ることができます。受け取った後、無くさないように注意しましょう。
ハローワークで失業保険の手続きを行う
退職が完了したら、下記の必要書類等を用意し、ハローワークで失業保険の手続きを行いましょう。
- 離職票
- 診断書
- マイナンバーカード
- 印鑑
- 写真
- っ本人名義の預金通帳
上記の書類を持って手続きを行い、受給資格が確認されると、次に雇用保険受給者初回説明会に出席し、「雇用保険受給資格者証」を受け取ります。 雇用保険受給者初回説明会は、受給資格の確認後、1週間後に実施され、所要時間は2時間ほどです。 その後、「失業の認定」を受けることで、手続きが完了します。しかし、失業の認定は、受給開始後も原則として4週間に一度受ける必要があります。4週間の間に、ハローワークが行う職業相談や職業紹介など、ハローワークが指定した求職活動を行い、2つ以上のハンコを受け取ることが条件になります。
失業保険を受け取るために無理をする必要はない
失業保険を受け取るためには、就労する意思や能力があることが求められます。 だからといって、体調が安定していない状態で無理をしてしまうと、より体調を悪化させてしまう場合があります。 失業保険以外にも、生活を安定させるための制度はあるため、失業保険にこだわらず、自分に合った手段を選ぶようにしましょう。 下記で紹介している傷病手当金、障害年金、生活保護については、こちらの記事「就労移行支援でお金がなくても生活費を得る!失業保険や給付金を紹介」にて詳しく解説しています。 傷病手当金
傷病手当金
うつ病のような病気や怪我によって、仕事ができなくなった場合、傷病手当金を受け取れます。 【傷病手当金を受け取る条件】
- 業務外の病気や怪我が休職の理由であること
- 仕事に就けないこと
- 連続して4日以上休んだこと
- 期間中に給与を受け取っていないこと
傷病手当金と失業保険を同時に受給することはできないため、うつ病で退職し、すぐに転職活動ができる場合は、失業保険、しばらく療養する場合は傷病手当金を受け取る形になります。
障害年金
うつ病の症状の内容や、重さによっては障害年金を受け取れる場合があります。 障害年金は、1級〜3級に分類され、1級の方がより高額の年金を受給できます。この等級は、障害等級とは異なる基準で決められているため、混同しないように注意しましょう。 【障害年金に該当する条件】
- 1級:身の回りのことはかろうじてできるが、それ以上のことはできない人、入院や在宅介助が必要な人などが該当
- 2級:簡単な家事はできても、それ以上の活動はできない人、活動の範囲が病院や家庭内に限られる人が該当
- 3級:日常生活に大きな支障はないが、労働には制限がある人が該当
障害年金と失業保険は、それぞれの受給条件を満たしていれば、同時に受け取ることができます。
生活保護
うつ病によって働くことができない場合、生活保護を受給するという選択肢もあります。 【生活保護を受け取る条件】
- 預貯金や土地など自己資産を活用しても最低限の収入に満たない
- 働いていても最低限の収入に満たない、もしくは働けない
- 年金や手当を活用しても最低限の収入に満たない
- 親族等の援助を受けられない
これらの条件を全て満たすことで、生活保護の受給対象となります。 また障害者手帳を取得していると「障害者加算」が適用され、通常の生活保護費にこれを上乗せされた金額を受け取れます。
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