障害者の転職は難しい?転職がうまくいかない原因と解決方法を解説!
「障害を持つ方の転職は難しい」……確かに、業務や環境によっては、障害のために取り組むことが難しいものも少なくありません。しかし、障害を持つ方がより暮らしやすい社会を目指し、さまざまな変革が進んでいます。まずは障害者の転職についての環境とその現状を確認しましょう。
障害者雇用の現状
障害者の雇用は1960年に企業の努力義務として法廷雇用率が導入されたのを皮切りに、1976年には義務化され、現在では障害者雇用促進法の下、事業主に対して常時雇用する従業員の2.3%以上の障害者を雇うことが義務付けられています。(常用労働者数43.5人以上の民間企業の場合)このように徐々に手厚くなる国の施策と相まって、障害者の雇用数は長年増加傾向にありました。 厚生労働省発表の「令和2年 障害者雇用状況」によると、雇用されている障害者数は前年より3.2%アップ・1万7,683.5人増の 57万8,292人、実雇用率は前年より0.04ポイント上昇して2.15%とそれぞれ過去最高の数値を記録しています。なお法定雇用率達成企業の割合は前年より0.6ポイント増え、48.6%。こちらも過去最高基準を更新しています。さらに平成25年の法改正で精神障害者の雇用義務が課されることになり、民間企業の障害者雇用率は平成30年4月より2.2%、令和3年4月より2.3%に引き上げられています。 障害者の法定雇用率が引き上がれば、雇用率達成を目指す企業の求人数が増えます。ハローワークに申し込まれた求人数を求職者で割った値である「求人倍率」も上昇します。「求人倍率」は、ひとりの求職者に対して、どれだけの求職数があるかがわかる数字で、数字が大きくなればなるほど「就職先の選択肢が増える」ことを意味します。 そのほか各企業の障害者採用への理解や配慮が進み、障害者雇用におけるマーケットは基本的に「拡大している」と言えるでしょう。
参考:厚生労働省「令和2年 障害者雇用状況」
新型コロナウイルス感染症による影響
障害者の法定雇用率の引き上げや長期間にわたる求人倍率の上昇など、好条件ばかりが揃っているように感じる障害者の転職ですが、新型コロナウイルス感染症の影響は、障害者雇用にも及んでいます。 先ほどご紹介した「令和2年障害者雇用状況」は2021年1月に発表された最新データです。調査集計はその前年、2020年6月1日時点の状況をまとめたものになります。 障害者雇用に関しての重要な参考データはもう一つあります。それが「ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめ」です。 こちらは毎年6月に発表される、前年度の状況を集計したデータになります。
【障害者の就職件数と就職率】
/ | 就職件数(件) | 対前年度差(比) | 就職率(%)(対前年度差) |
---|---|---|---|
身体障害者 | 20,025 | 5,459 件減(21.4%減) | 34.7(6.4ポイント減) |
知的障害者 | 19,801 | 2,098件減(9.6%減) | 57.7(1.7ポイント減) |
精神障害者 | 40,624 | 8,988件増(18.1%減) | 42.6(3.6ポイント減) |
その他の障害者 | 9,390 | 3,222件増(52.2%増) | 38.2(1.6ポイント減) |
合計 | 89,840 | 13,323件増(12.9%減) | 42.4(3.8 ポイント減) |
この表は障害者の就職件数と就職率を表にしたものですが、法定雇用率が上方改定されたにもかかわらず、就職率はほとんどの障害種別において減少しています。 これは、製造業、宿泊業、飲食サービス業、卸売業、小売業といった比較的障害者の雇用を積極的に行っていた業界が新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けたこと、また就職活動自体、実施困難になってしまったことが理由として考えられます。 いわゆる「アフターコロナ」には、障害者雇用のために積極的な活動を再開する企業が増えることが予想されます。その時のために、今から準備をはじめておくことをおすすめします。
転職がうまくいかない原因3選
転職を成功させるポイントの前に、まず転職がうまくいかない原因について解説します。ご自身の現状を照らし合わせてみてください。
自己分析が不足している
自己分析と聞くと、就活生がすることと思うかもしれませんが、転職活動をする際にも自己分析は必須の準備です。 まず、自己分析をしていないと、自分がどんな人間なのかを会社側に伝えることができません。また、障害者枠で働く場合は、自分の障害についても正確に会社側に理解してもらう必要もあるため、
- 自分がどんな人間なのか
- どんな仕事をしたいのか
- どんな障害を持っているのか
こちらの内容を正確に把握できるように自己分析を進めましょう。
自分に合わない会社を選んでいる
転職を成功させるためには、会社選びも重要です。自分に合わない会社を選んでしまうと、選考もなかなか通りませんし、仮に入社できたとしても短期間での退職につながりやすくなります。 そのため、自分に合った会社はどんな会社なのかを考えてみましょう。 会社を選ぶ基準には、
- 事業内容や業務内容
- 社風や企業理念
- 障害者雇用への取り組み
など様々です。それぞれの基準から、自分が絶対に譲れない条件を元にエントリーする会社を選んでいきましょう。 ただ、職場環境や業務内容が自分の障害にとって負担をかけないかどうかについては、必ず判断基準に組み込みまなければいけませんので注意してください。
伝えるべきことが伝えられていない
自分のことを会社側に知ってもらわないかぎり、転職はうまくいきません。 書類選考と面接、この2つのチャンスを十分に活かし、
- どうしてその会社に入りたいのか
- 自分はどんな人間なのか
- 自分が持っている障害について
これらの情報を正確に伝えましょう。 そしてこれらを伝えるためには、やはり自己分析が大切になります。早く転職したいからといって慌てて転職活動を開始するのではなく、準備を徹底しましょう。
障害者の転職を成功させるための5つのポイント
転職を成功させる「近道」を探すことよりも、大切なことは「基本を押さえ、自分で取捨選択すること」です。必ず知っておきたい5つのポイントを紹介します。
スケジュールの把握・調整
障害者の転職に限ったことではありませんが、転職を成功させるためのカギのひとつがスケジュールの管理・調整です。在職中、もしくはすでに退職しているかで目安となるスケジュールが異なりますので注意しましょう。 既に退職している場合、転職活動開始時から入社まで早くて1〜2ヵ月、在職中の場合は3〜4ヵ月が目処となります。 選考のステップは企業によって異なりますが、一例を挙げると下記の通りです。
◆選考ステップの例1(筆記試験あり) 書類選考(エントリー)→ 筆記試験→ 面接2回→ 内定
◆選考ステップの例2(筆記試験なし) 書類選考(エントリー)→ 面接3回→ 内定
在職中の場合は仕事に影響が極力出ないように面接の日程調整に注意してください。企業によっては執務時間内での対応を求められることもあるので、有給休暇などの申請が必要な場合もあります。 また「辞めるから」と現在の仕事を疎かにするのはマナー違反ですので、在職中の場合は現在の仕事に影響しないように転職活動を進めましょう。 コロナ禍において数多くの企業がオンライン面接を実施していますが、最終段階に近いものは対面での面接となる場合が多いことを意識しておきましょう。
転職の条件を整理
満足のいく転職活動をするためには、仕事に求める条件を自分なりに整理することが大切です。 仕事に求める条件は「仕事内容」「やりがい」「職種」「業種」「企業規模」「年収」「勤務地」など人によってさまざまですが、希望の条件を全て満たすことのできる就職先はなかなかありません。まずは「なぜ転職するのか」、転職の目的を考えてみましょう。
<転職理由の具体例>
- 勤務地、勤務時間など労働条件を変えたい
- チャレンジしてみたい仕事がある
- 今の職場は障害に対する配慮が少ないため環境を整えたい
- 在宅ワークができる仕事を探したい
- 異動の打診を受けたが、全く新しい職種なので不安がある
転職する目的が明らかになったら、転職条件を明確にして優先順位をつけていきましょう。優先順位が明らかになれば、そのうちどこまでの条件は譲れてどこから譲歩できるのか、自分の条件を整理していきます。
自分に合った情報収集をしっかり行う
自分に合った情報収集をしっかり行いましょう。 例えば転職の目的が「仕事のやりがい」である場合、同じ業界の情報ばかり探していては他業界のやりがいある仕事を見逃してしまう可能性があります。「仕事のやりがい」は人によってさまざまだからです。自分が何にやりがいを感じるのか、例えば「資格取得など具体的な目標があることで自分の成長を実感できる」のか、「仕事の成果によって報酬が大きく変化する」ことなのか、「社会の仕組みを変えるほどの大きな影響力のある業務に携わっていること」なのかで探し方は変わります。 「転職の目的」がしっかりしていないと、CMをしているような大企業や有名企業などに目がいきがちですが、そのような企業はごく一部にすぎません。中小企業庁によると中小企業の定義は下記の通りで、日本の421万企業のうち99.7%が「大企業以外」の企業なのです。
【中小企業の定義】
業種 | 中小企業の定義条件 |
---|---|
製造業 | 資本金3億円以下又は従業者数300人以下 |
卸売業 | 資本金1億円以下又は従業者数100人以下 |
小売業 | 資本金5千万円以下又は従業者数50人以下 |
サービス業 | 資本金5千万円以下又は従業者数100人以下 |
参照:中小企業庁(https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/chushoKigyouZentai9wari.pdf)
また障害者の採用情報サイトにも、新卒向けやハイクラス求人など目的別のサイトがあるほか、企業によってはハローワークを通して採用活動を行い、オンラインでの求人募集広告を利用していないケースもあります。 転職活動をする時には、「自分の転職の目的に沿った情報収集」「企業規模や業界などにこだわりすぎない」「転職目的に合わせた採用情報チャネルをうまく使いこなす」ことを念頭に、オンラインだけに頼らずハローワークなどへ足を運んで幅広い情報収集を心がけましょう。
面接準備をしっかり行う
意外と見落としがちなのが、面接の準備です。面接は転職活動の成否の鍵を握る重要なプロセスですので、しっかり準備をしておきましょう。 「各企業共通の質問」「企業独自の質問」を想定し、質問への回答を準備します。家族や友人などに面接官役を依頼し、面接本番までにロールプレイングを何度かしておくといいでしょう。 面接準備にあたっては応募企業の特徴や求める人材・理念などを把握し、自分が企業理念に共感している、求める人材にマッチしていることが伝わるように意識しましょう。特に、中途採用の場合業務に対する理解を新卒採用時よりも強く求められることが一般的です。 企業ホームページに記載されている内容はもちろん、ニュースサイトや業界専門紙に取り上げられたことまで把握できれば、より熱意を伝えられます。調べたことを踏まえ、以下のような想定質問に答えられるよう考えをまとめてください。
<面接でよく聞かれる質問例>
- まずは自己紹介をお願いします。
- これまでの業務内容について詳しく教えてください。
- ご自身の障害について教えてください。
- 業務にあたるうえで、配慮を希望することがあれば教えてください。
- 当社への志望理由を教えてください。
- 当社のプロダクト/サービスについてどのように思われますか?
- あなたの経験や能力を当社でどのように活かしたいとお考えですか?
- 今回転職をお考えになった理由を教えてください。
- 転職について、ご家族など身近な方はどのようにお考えですか?
障害者枠で働く場合、特に障害について詳しく聞かれます。 そのため、
- 障害の内容について
- 障害が理由でできない業務
- 働く上で必要な配慮
これらの内容を正確に伝えるようにしましょう。 また、忘れがちですが、爪や髪型・服装など、清潔感は社会人として基本中の基本。面接でどんなに素晴らしい受け応えができたとしても、清潔感が欠けていては企業側の印象も悪くなってしまいますので、気を付けるようにしましょう。
雇用形態、キャリアステップをしっかり理解しておく
納得できる転職活動のために、企業の雇用条件や形態・キャリアステップはしっかり理解しておきましょう。障害がある人の働き方には、主に三つの方法があります。
【障害者雇用】障害者雇用枠での就職
障害者雇用促進法(正式名称:障害者の雇用の促進等に関する法律)で定められた障害者を対象とした雇用枠です。 障害がある前提での採用となるため、障害に対する配慮を受けながら働けるというメリットがあります。
【一般雇用】障害の有無に関わらない就職
健常者と同様の雇用枠での就労のことを指します。 障害を会社に伝えるかどうかは自分で選ぶことができ、会社に告知して就職する場合は「オープン就労」、告知しない場合は「クローズ就労」と呼ばれます。
【福祉的就労】就労継続支援
就労継続支援は、障害に対する手厚い配慮を受けながら就労できる、主に障害者を対象とした作業所です。 就労継続支援には、雇用契約を結ぶ「A型」と雇用契約を結ばない「B型」の2種類があります。 就労継続支援についてはこちらの記事「障害者向けの作業所とは?就労継続支援から一般就労を目指す方法や作業内容を解説」にて詳しく解説しています。
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