精神障害者でも働きやすい!特例子会社で働くメリットを現役エージェントが解説します
働く障害者のみなさん、「特例子会社」をご存知ですか? 特例子会社は、障害者の方が転職を考える上で、ぜひ知っておいていただきたい雇用型体の一つです。 しかし、「特例子会社ってどんな会社なの?」「普通の障害者雇用と比べて何がいいの?」といった疑問を持たれている方もいらっしゃるはず。 そこで今回は、障害者に特化した求人サービス「エラビバ」で働く現役エージェントの三上さんに、特例子会社で働くメリットについて伺いました。
特例子会社と一般企業の障害者雇用との違いは?
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宮﨑
アズ・イズ編集長の宮﨑です。 今回は、特例子会社で働くメリットについてお伺いします。
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三上
よろしくお願いします。
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宮﨑
本題に入る前に、そもそも特例子会社とはどのような会社なのか、教えていただけますか?
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三上
特例子会社とは、障害者の雇用促進、そして定着を目的とし、特定の企業の一事業所とみなされる子会社です。就労におけるさまざま面で、障害者への配慮がなされています。
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宮﨑
一言でいうと、障害者にやさしい会社ですね。
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三上
そうですね。特例子会社として厚生労働省に認可を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 親会社が子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること
- 親会社から子会社への役員派遣、従業員の出向など、人的交流が密であること
- 子会社は株式会社であること
- 子会社に雇用する障害者が5人以上で、かつ全従業員の20%以上を占めること。また、雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の合計数割合が30%以上であること
- 障害者の雇用管理を適正に行うに足る能力を有していること
- その他、障害者雇用の促進および雇用の安定が確実に達成されると認められること
引用元:埼玉労働局職業安定部職業対策課
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三上
特に注目なのは④番。重度身体障害者や知的障害者、精神障害者の割合も定められているんですよね。 一般企業も障害者を雇用する上で法定雇用率(※1)を意識していますが、比較的業務を遂行しやすい、軽度の身体障害者を優先して採用する傾向があります。その点、特例子会社は重度の障害を持った方々の割合も決まっていますから、採用が偏りにくいという特性があります。
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宮﨑
なるほど。特例子会社は、重度の障害を持つ方の働き口にもなるわけですね。今教えていただいた点以外で、特例子会社と一般企業における、障害者雇用の違いはありますか?
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三上
特例子会社の特徴として、親会社とは別に、労働能力など障害特性に配慮した就業規則がつくれること、障害者の受け入れに特化した助成金を受け取れることなどが挙げられます。 特例子会社を一般企業と比べると、雇用主にとってはお金の工面や規則制定など、さまざまな面で経営がしやすくなるんです。 また障害者目線では、雇用機会が拡大しますし、働きやすい環境で働くことも可能になりますよね。
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宮﨑
特例子会社を設立することで、雇用主と障害者の双方にいいことがあるんですね。特例子会社についてよく分かりました。
※1 障害者の雇用を促進するために事業主に義務付けられた、雇用しなければならない障害のある人の割合
障害者目線で考える、特例子会社で働くメリットは?
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宮﨑
いよいよ本題に移ります。現役エージェントの三上さんが考える、特例子会社で働くメリットは、どのような点でしょうか。
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三上
私が考えるメリットは、下記の6点です。
- 労働環境に配慮がある
- 労働条件が整っている
- 能力を発揮しやすい
- 取り組みやすい仕事が多い
- 障害への理解がある
- 環境変化が少ない
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三上
順番に説明していきますね。まず、「労働環境」について。 特例子会社では、施設のバリアフリー化をはじめ、手話通訳士が常駐しているなど、障害者が働きやすく、過ごしやすい環境が整っている場合が多いです。 中にはパソコン等の通信機器に機能を付加するなど、細部に至るまで障害者に配慮している企業もあります。
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宮﨑
一般企業では多くの場合、ここまで整備が進んでいないと思います。施設の環境改善だけではなく、業務上の配慮があるのは、特例子会社ならではかもしれませんね。
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三上
次に「労働条件」に関して。特例子会社は、時短勤務や在宅勤務が可能なケースが少なくありません。さらにフレックス制、半休制度、通院休暇制度(※2)を取り入れている企業も存在します。
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宮﨑
なるほど。特例子会社で働く方の中には、体調面に不安があったり、通院を必要とする方も多くいらっしゃいますから、時間の融通が利くのは嬉しい点ですね。
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三上
「能力を発揮しやすい」という利点もあります。特例子会社では、定期的に面談を行ったり、仕事に従事する前に業務を体験できたりと、適性・特性に応じて人事配置を行うことが多いようです。
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宮﨑
障害の度合いや部位等にも個人差があるので、そうした点を考慮した上で配置をしてくれるわけですね。ただ向き・不向きで判断するのではなく、障害者を多く雇う特例子会社ならではの取り組みだと感じます。
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三上
「障害への理解がある」ことも大きなポイントです。特例子会社で働く場合、同僚には障害者が多いですし、健常者のスタッフも障害への理解があります。「業務をする上でコミュニケーションが円滑に進む」との声を、実際に特例子会社で働いている方からよく聞いています。
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宮﨑
業務とコミュニケーションは切り離せませんからね。「理解がある」というのは、健全に働く上での大前提かもしれません。
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三上
加えて「取り組みやすい仕事が多い」ことも魅力の一つ。特例子会社における主な業務は、データ入力や資料・備品の管理、郵便物の仕分け、印刷など。身体的・精神的に負担が少ない仕事が比較的多くなっています。 もう一つ、精神的負担の軽減につながる特徴として、「環境変化が少ない」ことが挙げられます。異動や業務内容の変化が少ないので、基本的には何度もイチから関係性を築いたり、仕事を覚え直したりする必要はありません。
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宮﨑
特例子会社のメリットについてここまでお伺いしてきました。あらゆる面で障害者の負担を減らそうと取り組んでいるのが印象的です。
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三上
そうですね。雇用主としても定着率は意識していますから、そこで働く方が少しでも快適にのびのびと働くことができるよう、考えを巡らせているんです。 エージェントの目線からも、障害者は働きやすさを重視する傾向があると思っていますので、その上でのメリットを6点紹介させていただきました。
※2 通院するための有給制度。年次有給とは別カウント
特例子会社の雇用状況と、精神障害者・知的障害者の内訳
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宮﨑
法定雇用率の話が何度か出ていますが、特例子会社の雇用状況はどうなっているのでしょうか?
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三上
厚生労働省によると、2019年の特例子会社数は486社、雇用されている障害者数(実人員)は約23,000人ほど。5年前と比べると、特例子会社数は100社以上、働く障害者数(実人員)は、約1万人程度増加しています。
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宮﨑
どちらも増加傾向にあるんですね。
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三上
そうなんです。さらに障害者数の内訳を重度ダブルカウント(※3)で計算すると、身体障害者は約11,500人、知的障害者は約16,200人、精神障害者は約5,000人と統計が出ています。 知的障害者数と精神障害者数を足すと、身体障害者数の倍近い数字になることが分かります。
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宮﨑
軽度の身体障害者ばかりを優先して採用しているわけではないことが、このデータからも読み解けますね。
※3 法定雇用率において、週30時間以上働く障害者を1カウント、身体及び知的の重度障害者はダブルカウント(2カウント)として数える
転職の候補に、特例子会社という選択肢
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宮﨑
三上さん、今日はありがとうございました。特例子会社は障害者にとって多くのメリットがあることが今回の対談でよく分かりました。
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三上
特例子会社は障害者にとって、非常に働きやすい環境だと思います。
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宮﨑
ところで、2018年4月には法定雇用率が従来の2.0%から2.2%に引き上げられましたよね。さらに2021年末までには2.3%まで引き上げることが確定したとか。特例子会社への影響も、少なからずあるのではないでしょうか。
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三上
その通りです。法定雇用率引き上げに伴い、雇用主はますます障害者雇用に力を入れていく必要があります。その際、雇用主としてもメリットの大きい特例子会社が、障害者雇用の中心になっていく可能性は十分にあると思います。これから転職を考えている方は、特例子会社を選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。
参考資料:厚生労働省「特例子会社制度の概要」
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