前人未到を目指せば、他人と比較しない人生を生きられる。盲目の声優・北村直也インタビュー #EditorsEye

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編集長宮﨑をはじめ、障害者雇用バンク編集部員が、障害を物ともせず活躍する方を紹介するコーナー「Editor’s Eye」。

今回は、先天性の視覚障害を抱えながらも「できない」という思い込みを排除して、複数の肩書きを持って活躍する北村さんに注目しました。

今回紹介する北村直也さんは、先天性の視覚障害を持ちながらも、声優活動を中心に、作家やシステムエンジニアなど多岐にわたる舞台で活躍されています。

以前は色や光を認識できていたそうですが、今ではほぼ全盲の状態に。特に声優になるにあたり、「目が見えない」ことは大きなハンディキャップになります。通っていた声優養成所では、講師から「視覚障害者が声優になるのは前例がない」とも告げられたそうです。

しかし北村さんは、周囲の声をものともせず、声優として活躍。ゲームのキャラクターボイスや音声ガイド、CMのナレーションなどの実績を持っています。

また声優として役柄を演じるにあたり、練習として物語を書いていたところ、自ら小説を出版することに。キャリアのスタートはITエンジニアだったそうですが、現在ではマルチに才能を発揮されています。

高3男子の小野田由衛は進路希望調査票を前に悩んでいた。そろそろ進路を決めなくてはならない。でも、昔からひそかに抱いている「脚本家になりたい」という夢を誰にも話せていない。周りに話したら馬鹿にされるかもしれない。そんな恐怖が本音を心の奥に押しやっていた―。「Episode1 小野田由衛編」。声優を目指す少女の物語「Episode2 上里咲編」。由衛の幼馴染みの少女の物語「Episode3 加藤遥編」。3人の夢が交差した先には、どんな未来が待っているのか!?


ハンディキャップを背負いながらも、なぜ活躍の舞台を自分で切り拓き続けることができるのか——編集部の石田が、北村さんのバイタリティの源泉について、責任を持って伺ってきました。

困難を克服するからこそ、オンリー・ワンになれる

—— 視覚障害を持ちながら、どうして声優を目指すようになったのでしょうか。

北村:小学校の頃から、「演じること」に興味があったんです。

私は平凡な学生時代を過ごしていたのですが、一方アニメには、平凡な人生を送る主人公はいません。「アニメの中に生きていたら、モテモテになる経験ができたんだろうな」なんて考えていたこともありました(笑)。

いつかそうした仕事ができたらいいなと思っていた矢先、声優という職業があると知りました。ただ、視覚障害を持っている人が声優になるなんて、そりゃあ難しいわけです。障壁が多すぎます。

でも、好奇心が勝りました。これまでは人と比べてしまう性格でしたが、ここで声優になれたら、“世界初”なんじゃないかと。何か際立ってできることがあるわけではなかったので、自分だけのポジションを築きたいと思ったんです。

—— とはいえ、「障壁が多すぎる」のですよね…!具体的に、どのような苦労があったのでしょうか。

北村:まず台本の文字が読めませんし、撮影時に話し出すタイミングを合図するQランプも見えません。またアニメの場合、撮影した後に台詞だけ録音するアフターレコーディングがあるのですが、これも大変です。何人かで掛け合いする場面では、他の声優とのコンビネーションにも苦労します。

—— いかにして、そうした困難を超えてこられてきたのでしょうか。

北村:ITツールを用いて、できないことを一つ一つ克服してきました。たとえば台本は、事前にExcelやPDFデータでもらい、点字に変換。Qランプは録音の方にお願いして、ヘッドフォンに音で指示を出してもらっています。

これらの方法は、所属事務所の方と相談し、独自につくりました。エンジニアの経験が、声優の活動に役立っているんです。

しかし、まだまだ困難ばかり。たとえばアニメの現場は、ナレーションやゲームとは異なり、まだまだ紙の台本が主流の用で、台本をデータで貰うことが難しいです。すると、目の見えない僕は活動しにくいんです。

でも、決してネガティブには捉えていません。技術と知名度を上げて、制作側から指名される存在になれれば、「こういうやり方をしてほしい」と要望できる立場になれます。ハードルは高いですが、いまは頑張って実力を磨く段階だと思っています。

“不可能を可能にする男”が掲げる使命とは?

—— 北村さんはTwitterで、ご自身を“不可能を可能にする男”と表現されています。どのような背景があるのでしょうか。

北村:声優活動を通じて、私は周囲から「できない」と言われていたことを実現してきました。ITの知識と発想力・応用力を組み合わせ、困難を打破してきた経験から、自分を“不可能を可能にする男”と呼んでいるんです。

—— Twitterを含めて、北村さんはご自身の活動を積極的に発信されています。どのような存在を目指していますか。

北村:障害に悩み、夢を諦めかけた人の選択肢を広げる「コンサルタント」になりたいと思っています。

たとえば僕のように、ITツールが発達した現代なら、視覚障害者でも声優として活躍できますよね。このように、今まで困難を克服してきた経験を活かして、障害に悩む人に「こうすればいいんじゃない?」とアイデアを提案していく。——それが、私の使命だと思っているんです。

ネガティブな声を跳ねのけ、可能性を宿し続ける

—— いま障害に悩んでいる方々に声を掛けるとしたら、どのようなことを話したいですか?

北村:障害に悩む人がいたら、捉え方は周囲の環境によって変わるということをお伝えしたいです。たとえば、「視覚障害者に声優は難しい」と周囲に言われ続けるから、「自分にはできない」とネガティブになってしまうのです。

一方で、私は幼いころから同年代の視覚障害者と過ごす時間が長かったので、「目が見えないから不利だ」と感じる機会が少なかった。高校時代に通った盲学校では、先輩がインターネットのオフ会に参加する姿を見て、「そんなこともできるんだ」と視野が広がる経験もありました。

障害をネガティブに感じない環境で過ごしてきたから、声優にも挑戦しつづけられたのかもしれません。

—— ある日突然、後天的に障害者になる方もいらっしゃると思います。そこから前向きに生きていくためには、どのようなことが大事だと思いますか。

北村:まずはひとりで抱え込まず、周囲の人に相談してみることが大事だと思います。

とくに後天的に障害者になった人は、これまでできたことが急にできなくなり、自信をなくして悩んでしまいがちです。でも今は、SNSを通じて人脈をつくり、障害者同士でお互いの経験を共有できる時代。他の人に相談してみたら、「こうすればいいんじゃない?」と、新しい視点がきっと得られます。

—— 最後に、今後どのような活動をしていきたいかお聞かせください。

北村:私は幸運にも、技術が発達した時代に生まれたおかげで、声優になる夢を叶えることができました。自分の経験を広めることで、ひとりでも多くの人が夢を諦めずに挑戦しつづけられたらいいと思っています。

じつは今でも、Twitter経由で「声優を目指していたのですが、難しいと思って」と相談をいただくことがあります。もしこのインタビューの読者で悩んでいる方がいましたら、ぜひ気軽に相談してくれると嬉しいです。

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