「無理に前を向かなくてもいい、でも絶対に良くなる」——トレーナー・菅原瑞貴さんに聞く、障がいを乗り越えるトレーニング #EditorsEye

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編集長宮﨑をはじめ、アズ・イズ編集部員が、障がいを物ともせず活躍する方や障がいを持った方々を支える方を紹介するコーナー「Editor’s Eye」。今回は、障がい者専門トレーニングジムを運営する株式会社ユニバーサルトレーニングセンターの代表・菅原瑞貴さんに注目しました。

本日紹介する菅原瑞貴さんは、障がい者専門トレーニングジムを運営する株式会社ユニバーサルトレーニングセンターの代表。同センターでは、脊髄損傷などの身体障がいを抱えた方やパラアスリートを対象に、訪問型でのパーソナルトレーニングサービスを提供しています。

菅原さんはアメリカの大学を卒業後、アメリカのプロサッカーチームでトレーナーとして活動されていました。その後、日本のプロサッカーチームからも誘いがあったそうですが、とあるきっかけから障がい者をサポートをすることに。

私が菅原さんに注目したのは、思い描いていたキャリアを脱してまで、「障がい者の方をサポートする」という道に全力を注いでいるから。一人ひとりの気持ちに寄り添い、一歩踏み出すための後押しをされている菅原さんの想いに、心惹かれました。

本記事では、菅原さんのキャリアについて、編集長宮崎が責任を持ってリサーチ。「今は前を向くことができないけど、いつか自分らしくいきられるようになりたい」——そんな方に、菅原さんの想いが伝わると嬉しいです。

なぜ“障がい者専任のパーソナルトレーナー”になったのか?

菅原さんが「障がい者を対象としたパーソナルトレーナー」になったきっかけは、運動機能の回復のために努力を重ねる障がい者の方々との出会いにあるそう。

それまで菅原さんは、世の中で最も努力しているのは、プロアスリートだと思っていたそうです。しかし日々トレーニングを重ねる障がい者の方々を見て、「プロの世界でなくてもプロ選手以上に頑張って、死に物狂いになっている人たちが多くいる」と気づいたのだとか。

自分の体をより良い状態にするために、ひたすらに努力を重ねる障がい者を見て、自分の経験を活かそうと決意。しかし現状、障がい者が満足にトレーニングするための場所や情報は整っていません。

そこで菅原さんは、障がい者の方が満足いくトレーニング環境を提供し、一人でも多くの方の手助けをするために現在の事業を立ち上げました。現在は、日々多くの障がい者のサポートをされています。

編集長宮﨑の推しポイント

僕がみなさんに菅原さんを知ってほしい理由は、菅原さんの活動を知れば、「後天的に障がいを持った方が、一歩踏み出すきっかけを得られる」と感じたから。

後天的に障がいを持つと、それまで当たり前にできていたことができなくなります。ショックを受け、障がいを受け入れることができない方も多くいるでしょう。

僕も後天的に障害を持った一人です。日常生活の中で大きな不自由は生まれませんでしたが、大好きなスキューバダイビングができなくなりました。生きているだけで幸せなので、取るに足らないことかもしれませんが、やはり悲しくショックなものです。

これが歩くことができない、立つことができないとなると、ショックの大きさは計り知れないと思います。そんな人に対して、ただ「障がいを受け入れて頑張ろう」と伝えても、それは優しさでも応援でもない。それどころか、逆効果になることもあります。

菅原さんは今回のインタビューで、「障がいを受け入れられないのは当たり前のこと。無理に前を向こうとしなくてもいい」とおっしゃっていました。その上で「心と体はつながっている。体が改善すれば、自然と心も前を向く」とも。

さらに、「程度の違いはあるが、トレーニングを重ねれば症状は必ず改善する」と力強く言い切ってくださいました。

障がいを受け入れることができない方、前を向く気分になれない方に、菅原さんの言葉をお届けします。

ユニバーサルトレーニングセンター代表・菅原瑞貴さんにお話を聞いてみた

新しい人生の選択肢が生まれた、“努力の達人”との出会い

—— 障がい者専門のトレーナーとして活動されるきっかけについて、教えてください。

菅原さん:運動機能回復のためにトレーニングを重ねる、障がい者の方との出会いです。

私はもともと、アスリートのケアをするアスレチックトレーナーを目指しており、アメリカの大学に進学しました。卒業後には、アメリカのプロサッカーチームでインターンをさせてもらい、多くのプロアスリートが努力する姿をみてきました。

しかし中には、もっとできるはずなのに努力を怠り、出場機会を失っていく選手も。そんな姿を見て、なんとも言えないもやもやとした気持ちを持ちました。

しかし帰国後、そんなもやもやが一気に晴れる出来事があったんです。偶然障がい者の方のトレーニングを見る機会があり、彼らの必死にトレーニングをする姿に心を打たれました。

当時私は、日本のプロチームからも誘いもあったんですが、障がい者のトレーニングをサポートする道へ進むことを決めました。

—— トレーニングを重ねる障がい者の、何がそこまで菅原さんの気持ちを動かしたのでしょうか。

菅原さん:私は彼らに出会うまで、最も努力をしているのはプロアスリートであると考えていました。しかし、そうとは限らなかった。自分の身体機能を取り戻そうと、日々並々ならぬ努力を重ねる障がい者の方と出会い、自分の考えは間違っていたと気づいたんです。

彼らと出会ったことで、逆境に負けず、自分を変えるためにトレーニングを重ねる人たちをサポートしたいと思うようになりました。

—— 前職から独立後、ユニバーサルトレーニングセンターを設立されていらっしゃいます。きっかけについて教えてください。

菅原さん:障がい者がトレーニングできる環境がまだまだ不十分だと感じたからです。健常者と違い、障がい者がトレーニングできる場所は限られています。そのせいで、トレーニングしたくてもできない方が大勢いることが分かりました。

どれだけ本人にやる気があっても、選択肢がなければその気持ちは報われません。そういった方の選択肢を1つでも増やすことができればと思い、ユニバーサルトレーニングセンターを立ち上げました。

誰かの人生を変えられるかもしれないから、この仕事に賭ける

—— これまでユニバーサルトレーニングセンターを利用された方の中で、特に印象に残っている方はいらっしゃいますか?

菅原さん:頸髄損傷を患っていた、とある女性をご紹介します。

彼女はアメリカの大学を卒業後、障がいを持っていても過ごしやすい日本で生活することを選びました。

しばらくは一人暮らしをしながら社会人として頑張っていたのですが、なかなか体調管理がうまくいかず、仕事も思うようにいなかったそうです。トレーニングを始めたときは、身体的にも精神的にも安定しない状態でした。

重度の運動機能障がいを持っていた彼女は、寝返りすらままない状態でした。しかしトレーニングを重ねた結果、寝返り動作を当たり前にできるようになり、4分以上かかっていた起き上がりの動作も、30秒でできるまでに回復したんです。

—— 驚くほどの変化ですね!最終的に女性はどこまで回復されましたか。

菅原さん:彼女のように体幹機能が低いと、前向きに倒れてしまった場合、自分で体勢を立て直すことは困難です。しかし彼女はトレーニングを重ねたことで、自力で体勢を戻せるようにまで回復しました。

できることが増えていくことが自信になったようで、その後は環境の良い職場に転職し、生活レベルも向上。まさに、みなさんのお手本にしていただきたいような結果になりました。

「トレーニングを重ねれば何もかもが上手くいく」なんてことはもちろんありませんし、私たちのおかげと言うのは大袈裟です。私たちはあくまで頑張る彼女の背中を支え、押していただけ。

とはいえ、なかなか努力できる環境がないなか、その場所を提供し寄り添い続けられたのは事実です。これが私たちの大切な存在価値だと思っています。

悩み、向き合うことが、トレーニングのはじまり

—— 自分の障がいと向き合うことができない方にとって、トレーニングは障がいを受け入れるきっかけになりますか。

菅原さん:はい。でも、すぐに行動に移す必要はないと思っています。

それまで当たり前にできていた「立つ」「歩く」といった日常動作が急にできなくなれば、その現実を受け入れるのに時間がかかったり、目をそむけてしまうこともあるでしょう。でも僕は、それが悪いことだとは思わないし、むしろ当然の反応だと思います。

そんなときは無理に前を向ことせず、時間をかけて悩んでいいんです。

—— 自分の障がいを受け入れた上でトレーニングをすることが大切なんですね。 

菅原さん:必ずしもそうとは限りません。心と体は密接に関係しています。

つまり心の状態が、行動に変化を与えることもある一方、行動することが心に良い影響をもたらすことも。そのためトレーニングを開始する時点で、障がいを受け入れられていなくても何も問題はありません。

またトレーニングをはじめるきっかけも、人それぞれです。前向きな理由ではなく、「家族に無理やり連れてこられた」でも大丈夫。行動に移すことが大切です。そしてトレーニングすることで、肉体的にも精神的にも大きな変化が生まれます。

—— 最後になりますが、障がいを持った方にとって、ユニバーサルトレーニングセンターはどんな場所であってほしいと思いますか。

菅原さん:繰り返しになりますが、私たちの仕事は、変わりたいと思う障がい者の方のサポートをして、背中を押すこと。今すぐにでも変わりたいと思う方はもちろんですが、まだ障がいと向き合う時間が必要な方にも、一歩踏み出そうと思ったときの選択肢の1つとして数えてもらえたら嬉しいです。

症状などによって程度に個人差はありますが、トレーニングを重ねれば必ず運動機能は回復します。これだけは私の経験から断言できます。いざ一歩踏み出すとき、最初は不安だと思いますが、「頑張ったのに何も変わらなかった」となることはありませんので、安心して私たちの元を訪れてください。

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