サテライトオフィスから本社勤務へ。サタケが築いた、障害者雇用を組織の力に変える仕組み
株式会社サタケ
事業内容
米・麦・とうもろこしなどの穀物加工分野を中心に、食品加工機械およびプラント設備の製造・販売を行っています。特に米の加工技術を強みとしており、穀物の乾燥・調製、籾摺り、選別、計量、貯蔵、精米、包装など、収穫後から食卓に届くまでの工程を支える機械・設備を国内外に提供しています。現在では、精米プラントや穀物乾燥調製施設に加え、麦・とうもろこし向けの加工システム、食品関連機器、環境分野、産業機械分野にも事業を展開し、世界約150か国に製品を供給するグローバル企業として活動しています。
経営本部 人事部 東京管理課 平井様
サテライトオフィス活用前の障害者雇用に関する課題
—— サテライトオフィスを活用する前に、最も頭を悩ませていた障害者雇用に関する課題は何でしたか?
一番の課題は、自分自身に障害者雇用の経験がない上に、東京本社の職場環境や体制が全く整っていなかったことです。東京で障害者雇用を始める前は広島本社だけで取り組んでいて、任せっきりになっていました。
同じ人事部門として東京も取り組まなければと思いましたが、どこから手をつけていけば良いかわからない状態でした。
それに自分自身のマネジメント工数の問題もありました。広島の担当者が、障害のある方々に安心して長く働いてもらえるよう、フォローやサポートに多くの時間と人員を割いている姿をみていたので、東京でも同じような体制を整えられるかどうか。正直自信が持てなかったというのが本音でした。
そういった状況の中、グループ会社の統合や法定雇用率の引き上げにより、大幅に雇用の人数が不足することが見えてきました。
広島だけでは人数確保が追いつかなくなり、東京もやらなければならないと決意したのを覚えています。
—— 広島の雇用環境と、東京の違いはどんな点にありましたか?
広島は地域に根ざした採用ができていましたが、東京はそういう繋がりがなく、そもそもどこに相談すればいいかもわからない。採用マーケットが違う上に、受け入れる環境を一から作らないといけないという、二重の壁があった感じでしたね。
サテライトオフィス活用を選んだ決め手
—— 数ある選択肢の中でサテライトオフィスの活用を選んだ決め手は何でしたか?
農園型も正直候補として考えていました。事務作業が難しい方の働く場所としての意義や、障害のある方の働く選択肢が増えるという点では価値を感じていたのは確かです。ただ、自分の中に「障害があるとかないとかではなく、同じオフィスで一緒に働きたい、成長を一緒に歩んでいきたい」という想いがずっとありました。その際にサテライトオフィスに関する各種セミナーを受講したり、実際にサテライトオフィスを見学させてもらう中で、その想いを実現できるイメージを強く持てたことが最終的な決め手になりました。
それともう一つ、採用から定着まで一貫して支援してもらえるという仕組みに、強く共感したというのもあります。弊社は「稲から食卓まで」というコンセプトのもと、お米を刈り取ってからご飯になるまでの全工程を一気通貫で手掛けることを強みにしてきた会社です。それと重なるというか、障害者雇用においても採用だけ・定着だけという部分支援ではなく、全工程を一緒に伴走してもらえるという考え方に、自分たちの会社のあり方と同じものを感じて、これだと思いましたね。
—— 社内への説明はどのように進めましたか?
言葉で説明するより実際に見てもらおうと、広島の人事部長をサテライトオフィスに連れ出しました。見学時の反応としては「自分もここで仕事したい!」というコメントでした。フリースペースや集中できる環境をとても気に入ってくれていましたね。その一気通貫の仕組みへの共感もあって、社内の背中を押してくれた形になりました。
業務の切り出し方とレクチャーのプロセス
—— 業務の切り出し方、覚えるまでのレクチャーのプロセスを教えてください
まずは自分自身で社内営業を始めました。東京本社の管理職を中心に「こういう取り組みをする」と説明して、各部署を個別に回って切り出せる業務を集めていきました。最初は手探りで、どこまでできるかはわからないという状況でしたが、実際に加わってくれたメンバー(障害のある方)が本当に優秀で、どんどん吸収して手離れが早かったのは嬉しい誤算でした。
レクチャーの流れとしては、依頼部署にマニュアルを作ってもらい、オンラインの画面共有で教えてもらうのが基本です。その後は依頼部署ごとにグループチャットを作って、メンバーが直接質問できる環境を整えました。
メンバーへ3つのルールを徹底しています。 「チーム内で情報共有や相談をしっかりして、同じ質問をしないようにする」 「どうすればいいですか?ではなく、私はこう思いましたがそれでいいですか?という提案型で聞く」 「どこまで自分で判断していいか回答をもらった都度確認する」
これを繰り返すことで、メンバー自身が質問集を作り始め、マニュアルも自分たちで更新するようになり、新しいメンバーが来ても自走できる仕組みが自然とできあがっていきました。依頼部署からの信頼を得るというところも、こういった積み重ねがあってこそだと思っています。
—— 業務の幅はどのように広がっていきましたか?
常に社内営業を続けながら、メンバーの実力を各部署に周知していきました。「それならこれもお願いしたい」という声が自然と増えてきたことが嬉しかったですね。スキャン業務からスタートして、今ではCADを使ったモデル編集や、社内経理業務、クラウドシステムのデータ管理など高いスキルが必要な業務まで担ってくれています。依頼件数が同時期に10件以上になることもあり柔軟かつ幅広くこなしてくれていますね。
環境づくりと合理的配慮の実践
—— サテライトオフィスでの環境作りと、実施した配慮の具体例を教えてください
環境面でよかったと感じているのは、フリースペースの存在です。医療従事者の方が監修して作られたオフィスということもあって、1人用の椅子が置かれていて、緑色の床など、ほっとできる雰囲気が自然と作られていました。業務スペースと切り離して、気持ちを切り替えられる場所があるというのが、想像以上に良かったですね。
それと、ジョブコーチの方が常駐してくれていて、メンバーと面談しながら、その内容を詳細なレポートにまとめて送ってもらえるのが本当に助かっています。自分が毎回直接確認しに行かなくても、メンバーの体調や業務の状況をちゃんと把握できるので、「見えていない」という不安がなくなりました。広島では受け入れ体制をゼロから手探りで作り上げてきた歴史があっただけに、東京では最初からプロのサポートが整った環境でスタートできたことは、担当者としてもとても心強かったです。体調面でも、一時的に調子が悪くなることはあるのですが、基本的には本人たちで対処できていて、大きな混乱にはなっていないです。プロが定期的に見てくれているという安心感が、現場にとっても大きいのだと思います。
自分自身も週1回オフィスに足を運ぶことを続けていて、顔を見ているうちに「調子が悪い時の顔」がすぐわかるようになってきました。信頼関係ができてくると、メンバーの方から「今ちょっときつい」「下向きな感じがする」と話してくれるようになってくる。これは仕組みや制度だけでなく、関係性の積み重ねがあってこそだと思っています。
—— 具体的にどんな配慮を実施しましたか?
納期のない、もしくは納期期限まで余裕がある仕事を受けるようにしたのは大きなポイントです。複数の部署から業務依頼を受けているので「どの業務も歩みを止めない、少しでも進める」という意識を持ってもらうようにしました。休憩の取り方はメンバー自身に任せ、メンバー間でルールを決めてもらっています。コミュニケーションはチャットが中心で、管理者が入らない自由なMTGも実施しています。イヤフォンの許可や仕切りの設置など、各メンバーの要望にもできるだけ応えるようにしてきました。
導入前後の変化と成果
—— 導入前後の変化を、できる範囲で数字を交えて教えてください。
導入前は東京での障害者雇用がゼロだったところからのスタートでした。まずサテライトオフィスで業務を覚えてもらって、1年間安定して働いてくれたメンバーから順番に正社員登用して東京本社勤務へ転換していく、という形をとりました。広島本社での採用も並行して進めた結果、会社全体として法定雇用率2.7%を達成できる状態にまで持ってくることができました。
数字以上に嬉しかったのは、社内での障害者雇用に対する見方がガラッと変わったことです。正直、導入前は「大変そう」「どこまで業務を任せられるのか」という不安の声もありましたが、今では複数の部署から「あのメンバーにお願いしたい」「あれもいいですか。これもいいですか」と業務の依頼が来るようになって、欠かすことのできない従業員として完全に定着しました。最初のメンバーが今や新しく入ってくるメンバーへのレクチャーを担ってくれていて、ここまでうまく回るとは正直思っていなかったので、嬉しい誤算でしたね。
東京本社への転換にあたっては、人事部門の隣の部屋を就業スペースとして用意しました。サテライトオフィスと同じように静かな環境で、席ごとのパーテーションやカーテン付きの休憩スペースも整えていて、何かあればすぐ人事部門の私たちに相談できる距離感というのも、本人たちにとって安心感があるみたいです。面談も月1回(60分)のペースで継続していて、転換後もしっかりフォローできる体制を維持しています。
以前は受け入れ体制をどう作ればいいか、組織としても手探りの状態だったことを考えると、マネジメントの負担感も、障害者雇用への意識も、本当に大きく変わったなと感じています。
—— 本社転換後のメンバーの変化はいかがでしたか?
「人生設計がしやすくなった」という声が上がっていて、一人暮らしや婚活を始めたメンバーもいました。賞与の額を見て喜んでくれていたり、年間休日が増えたことを素直に喜んでくれていたり。パートの時は休みが多い月は給料が減ってしまうので、正社員になって初めて安心して休める、という感覚があったみたいです。そういう変化を間近で見られるのは、担当者としても本当に嬉しいことですね。
それと大切にしているのは、変化を仕掛け続けることです。マンネリ化が一番危険だと思っていて、パートから正社員へ、サテライトオフィスから本社へ、そういった変化のたびにメンバーたちが新たな目標を持って前を向いてくれる。先輩メンバーが体現してくれているから、後から入ってくる方にとっても「ああなれるんだ」という安心感につながっている。そういう好循環が今もしっかり回っています。
うまくいかなかった経験と乗り越え方
—— 「思ったようにいかなかった」という経験はありますか?
やっぱり「うまくいかなかったな」と感じた場面はありましたね。やる気があって一生懸命取り組んでくれるメンバーが多かったので、「これも任せてみよう」とどんどん業務をお願いしていたんです。でも、それが結果的に負荷をかけすぎてしまって、体調を崩してしまったケースがあって。本人のやる気を信じるあまり、ちょっと無理をさせてしまったなという反省がありました。
ただ、そこで本当に助かったのがサテライトオフィスのスタッフの方々の動きです。休みの日にも通院できているかどうかをチェックしてくれていて、定期面談だけでなく状況に応じて臨時面談を設けて、本人から丁寧にヒアリングしてくれたんです。業務の量や負荷のバランスについても、私たちと本人の間に入って調整してくれて、おかげで大事には至らずに乗り越えることができました。
自分たちだけで抱えていたら、なかなか気づけなかったと思うんですよね。「何かおかしいな」というサインを早めにキャッチして、すぐ動いてくれるプロがいるというのは、企業側にとって本当に心強いなと改めて感じた経験でした。
—— その後、業務の任せ方はどう変わりましたか?
リーダー役を一人に集中させず、分散するようにしました。抱えすぎないように気をつけて見るようになったというのが一番大きな変化です。あとは、メンバー間の決め事はメンバー内で相談して決めてもらうようにしています。自分たちで考えて動く習慣が、無理のない業務バランスにも繋がっている気がしますね。
導入を検討している企業へのメッセージ
—— 導入を検討している企業担当者に「まずここから始めるべき」というアドバイスを。
導入を検討されている企業の担当者の方にお伝えしたいのは、「完璧な状態を求めなくていい」ということです。スキルよりも、自分の体調をちゃんと自分で発信できる方、素直に周りのアドバイスを受け取れる方を採用の軸にする。そこがしっかりしている方は、業務は後からちゃんとついてきます。一緒に育てていくつもりで、長く働いてもらえる方を選ぶ。そのマインドで取り組むと、障害者雇用は会社にとって本当に意味のあるものになると思います。
私自身、障害があるとかないとか関係なく、「いち社員として育てる」という気持ちで関わってきました。剣道を教えていることもあってか、もともと人を育てることへの思いは強い方だと思うんですけど、それは障害者雇用でも全く同じです。「できないから任せない」じゃなくて、「どうすればできるようになるか」を一緒に考えるスタンスで向き合ってきました。その人と向き合うこと、それに尽きると思っています。向き合えば、他の人には見えないものが自分だけには見えてくる。それが育てることの本質なのかなと。
その結果、今では先輩メンバーが後から入ってくれた方へのレクチャーを自然と担ってくれるようになって、複数の部署から業務を依頼されるほど活躍してくれています。「輝いている目を見たくてやっている。その目に自分が元気をもらっている」、気づいたらそういう関係になっていましたね。採用時の判断は間違っていなかったなと、改めて思っています。
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