多様性を認める職場育成ー日本エンジニアリングソリューションズから学ぶ初めての障害者雇用
障がい者の「はたらく」を取り巻く環境は、理想と現実が乖離しているのが現状です。なかなか就職先が見つからなかったり、仮に就職することができても、障害への理解のなさから生まれる人間関係に悩み、早期退職をしてしまう雇用者がたくさんいます。 本シリーズの第九弾は、日本エンジニアリングソリューションズ株式会社の勝田さんと勝田さんの上司にあたる竹内さんにインタビュー。 障害者を初めて雇用する上で、受入体制の整備や障害有無問わず裁量のある仕事に取り組むことができる職場環境ついて、詳しくお話を伺いました。
入社の決め手は「ありのまま」の自分を受け入れてくれたこと
—— はじめに、勝田さんがお持ちの障がいについてお聞かせください。
勝田:私はてんかん、視覚障害、脳梗塞による手足の麻痺があります。てんかんは原因不明で16歳の頃に発症し、現在は服薬で症状は抑えられています。 視覚障害は前職在籍中に網膜色素変性症が原因で視覚障害の診断を受けました。症状としては進行性の病気で明るすぎるところ、暗すぎるところが見えづらくなることや視野狭窄により目の見える範囲が狭くなることで、外出時は白杖を使用しています。 脳梗塞は視覚障害と診断を受けた2年後に発症し、半年リハビリ病院に入院して、結果的に足と手に麻痺が少し残りましたが日常生活に支障がない程度まで回復しました。
—— そうだったんですね。前職ではどのようなお仕事をされていたんですか。
勝田:前職では、介護職として勤務していましたが、業務中、右腕の怪我による休職をした際、眼科へ眼鏡をつくりに行き、その時、医師より視覚障害の難病であることを告げられました。 その後は、介護職を退職し、あん摩マッサージ師の資格を取得するために5年間盲学校に通いました。
—— これまでのご経験とは異なる業界だと思いますが、日本エンジニアリングソリューションズへ入社した決め手をお伺いできますでしょうか。
勝田:コロナ禍でオンライン面接ばかりで苦戦していたところ、対面面接でありのままの自分を見せることができ、病気が多いにも関わらず私の話を聞いてくれ、障害を受け入れてくださったことが一番の決め手ですね。 また、入社前から事前にどのような配慮が必要かどうかしっかりと確認していただき、また、駅までの安全な経路を調査頂き入社後にミスマッチがおきないようにしてくださいました。
—— 入社後はどのような配慮をしていただきましたか。
勝田:私専用の大きいモニターとキーボードを用意していただき、2画面使えるように配慮してもらいました。見やすいように自分自身でカーソルや文字を拡大したり、白黒反転をして見やすいように工夫しています。 あとは、デスクの上にライトを置いてもらい仕事をしやすいような環境を作っていただきました。
職域拡大が企業と障害者の成長を切り拓く
—— お二人は現在どのような業務を担当されていらっしゃいますか。
竹内:私は会社の基盤である、財務・経理・人事・労務・総務・システムなどの基幹部分を取りまとめている責任者として経営管理部長の業務を行っております。
勝田:私は総務・労務業務として入社・退職者の手続き、メールアドレスの作成、備品管理、会社書類の管理、名刺作成及びその管理や従業員の社宅契約の管理などを行っております。 Excelもはじめはわからないことだらけでしたが、入社時に竹内さんからExcelの本を用意していただき、それを見ながら関数を勉強して、今は表の作成もできるようになりました。
—— 沢山の業務に携わっているんですね。徐々に業務を拡大されたのでしょうか。
竹内:そうですね。職務拡大のような感じでできる業務を徐々に増やしながらMBO(目標管理制度)を通じて、毎半期繰り返しながら「次どんなことをやってみたい?」などと勝田さんと会話をしながら「私がやっていたものを引き渡すね」という感じで徐々に業務を増やしていっています。
—— タスク管理や目標設定などはどうされているんですか。
竹内:todoリストではなく週初めに朝会をやっているので、その中で「今週は〇〇をしていきます。」と個々人で予定を発表してもらっています。タスクは週単位で決めているのでルーティン業務とは別でイレギュラー業務をプラスαでやってもらっています。なので勝田さんも、他の社員と同じように業務を行ってもらっています。 そのためにもMBOを導入しているので、勝田さんと目標設定のすり合わせをしながら面談させていただいていて半期ごとに進捗状況を見ながら、内容を変えたり、業務のプラスαになったり、会話を通じながら目標設定や進捗管理を行っています。 MBOの評価に基づいて、時間給を変えたり、雇用契約を変えたり、そういったところに通じる内容として勝田さんにも目標設計を持ってもらいポジティブに働いてもらいたいと思っています。
障害を超えて、一人の"個性"を大切にする場所
—— 貴社は初めて障害者を雇用されたと伺っておりますが、雇用する上でハード面とソフト面で整備された点はございますか。
竹内:ハード面は、以前から「事務所をバリアフリーにしよう」と大前提に掲げていました。これからの時代を考えると様々な方に入社していただくことを想定し、パーテーションで区切っていろんな空間を作れれば良いなと思い、弊社代表とともに執務エリアも開放感のある空間でいかに汎用性をもたせるかを意識していました。 ソフト面は、初めて障害者を受け入れるので、事前に「差別はだめよ」「差異と差別は違うからね」と話しておきましたね。 例えば、目が見えないだとか手が痺れて文字が書けないなどは、差異ですよね。それを卑下すると差別になってしまうので、差異を受け入れていこうと、当社の東京支店の方にも本社メンバーにもお伝えしました。
—— 同僚の方になかなか障害について理解いただけないケースもありますが、どのようにお伝えしましたか。
竹内:実際に手で目を囲って「こうやって見てください。これが彼の見える世界です。その中で彼は仕事をしていくんだから必然的に優しくなれますよね。」と事前にお伝えしました。全員が全員それを正しく認識していただけたかというと、難しいところはありましたが... その上で仕事は公平にしていきたいと思ったのでソフト面での受け入れはしっかりと配慮の持った考え方をすることを一番大切にしていました。
多様性に合わせた組織文化の変革
—— 勝田様が今後目指すキャリアプランについて、お伺いできますでしょうか。
勝田:今までの経験の中で、採用アシスタントや育成教育もしていたので、今後は立場、業界、経験を問わず、自分と境遇が同じ障害者の採用に携わることを今後の夢の1つにしていきたいと思います。 自分の中では今やっている仕事だけでなく、先を見て自分ができることを探しにいってやっていきたいと思っています。じゃないと、自分がそこで終わってしまうので。自分のできる仕事を探しながらやっていけばできる業務も増えていくと思うので、自分のできる仕事をどんどん増やしていきたいと思っています。
—— 竹内様にとって勝田様はどういった存在になりますか。
竹内:シンプルにうちのメンバーの主要メンバーの1人ですね。 バックオフィス業務となるといかに少人数で最大のパフォーマンスを出せるかが、どの企業でも求められると思うので、そうなった時に勝田さんにもそのパフォーマンスを出していただくことが必要条件になってきます。 なので、しっかりとお仕事に関してはお伝えしますし、できないことは教えますし身につけてほしいと思っています。彼なりの新しいアイディアも付加していただきたいですし、個と仕事に関しては至ってみなさんと同じなんですよね。そこを私は大切にしていきたいですね。
—— 最後に、今後貴社が目指す障害者雇用に関する目標について、お伺いできますでしょうか。
竹内:健常者であれ障害者であれ、そもそもその概念ではなく、これからは障害をお持ちの方、障害がない方、海外に籍がある方、間違いなく色んな人達が日本で働く機会が増えてくると思うんですね。 そこに対して、企業も変わっていかないといけないというのが大前提にあると思うので、そういったところで会社が、形を変えていって、働いてみたいという方々に合わせて我々の事業もスタイルも変わっていくし会社としての文化も変えていくようになるのかなと思っていますので、我々自身が、何のために当社があるのかを認識しながら社会の一助になれる企業体になっていければと思います。 ぜひ、求職者の皆様におかれましても、ご自身ができること、やってみたいことに自信をもっていただき、求職活動を楽しんでいただければと思います。そして近い未来、社会でご活躍されている姿を楽しみにしております。
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