私たちの取り組みは、着実に前進している 障害者雇用のリーディングカンパニー・IHIが目指す ”分断のない“理想の雇用環境
障害者の「はたらく」を取り巻く環境は、理想と現実が乖離しているのが現状です。 なかなか就職先が見つからなかったり、仮に就職することができても、障害への理解のなさから生まれる人間関係に悩み、早期退職をしてしまう雇用者がたくさんいます。 第四弾は、東証一部上場企業・IHI(アイ・エイチ・アイ)の宮田真さんにインタビュー。 宮田さんは「まだまだ課題はあるが、胸を張れる成果も出ている」と自社の障害者支援制度について語ります。 およそ30年に渡り行ってきた障害者雇用・教育への取り組みと、これから先に目指す世界についてお話を伺いました。
活躍環境の創出には、適切なサポートと職場からの理解が必須
—— 障害者雇用への取り組みは、いつ頃からスタートしているのでしょうか。
宮田:障害者雇用に本格的に取り組み始めたのは1992年からです。 ろう学校とつながりがあったことから、聴覚障害をお持ちの方を中心に、かれこれ30年近く採用活動を実施してまいりました。 これまでは新卒採用が中心でしたが、数年前からは中途採用にも力を入れています。
また、2018年4月から精神障害をお持ちの方を対象とする採用活動も実施しています。 ここ数年で、障害者雇用の充実により一層注力している形になりますね。
—— そうだったんですね。以前にも増し、障害者雇用に力をいれる体制をつくろうと考えた理由はありますか?
宮田:「適切なサポートと職場からの理解があれば、障害があっても、十分なパフォーマンスを発揮できる」という、全社共通の認識ができたからです。
以前は法定雇用率を守ることを第一に考えていることもありましたが、 障害のある方の労働環境整備に身を入れたところ、障害の有無がそれほど業務に影響しないことや、適切に業務をお願いすれば、問題なく遂行できることが分かってきたんです。 今では、十分な仕事量を確保したうえで,法定雇用率をはるかに上回る雇用をしてもいいのではないかという空気さえあります。
—— 「適切なサポート」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
宮田:現在「一つの解」として見出したのが、専門的なサポートスタッフを配置することです。 IHIには障害のある方が所属する部署が存在していて、所属するメンバーは、本社にある各部署から委託される業務を担当しています。 入社後はまず、そこでPCスキルの習得や専門知識の理解をしてもらうんです。
いずれはその部署から本社の各事業部へ異動することを目指すのですが、それまでの間、高度な専門性を有するサポートスタッフが業務を支援します。 現在サポートスタッフは2名おり、1名は精神病院での看護師として、また就労支援施設のスタッフとして勤務した経験があります。 他方は、就労支援施設と特例子会社での勤務経験があり、さらに作業療法士の資格も保有しています。
高度な専門性を有する2名のサポートスタッフがいることで、健常者には見えにくい苦労に気づくことや、ちょっとした違和感を見過ごさずに済む。 こうしたサポート体制を充実させることで、問題なく業務を遂行してもらうことができています。
本気で挑むからこそ、課題が見つかる
—— 「採用して終わり」ではなく、その後の活躍を見据え、体制を強化しているんですね。具体的に、育成のフローを教えていただけますか?
宮田:弊社に興味を持っていただいたら、まずは1週間の十種の機会を提供しています。 実習で従事する業務は、入社後に実際にやっていただく業務そのものです。 また座席も、社員と同じ執務室を使用します。
というのも、リアルな業務を経験しなければ、向き不向きを見極めることが難しいから。 実習後に入社を希望された場合に、面接を行い、採用に至ります。
—— 活躍を見据えた採用・教育フローがあるんですね。
ここまで充実した研修 を行っている企業はそう多くないと感じ ますが、何か課題も感じ ているのでしょうか…?宮田:正直なところ、課題は少なくありません。 弊社のことをよく知っていただきたいので赤裸々に話しますが、新卒のような定期採用でない場合、まだまだOJT的な教育に偏っており、会社全体を知る機会が少ないのが実情です。 現在、この課題の解決に取り組んでいるところです。
基本的に中途採用は即戦力として活躍してくれることを期待しているので、業務に入るまでの研修期間が短くなっています。 ただ数年前に、中途採用の方であっても、業務の前段階での教育体制を充実させると決断しました。
たとえば、所属する部署とは違う仕事の理解をしてもらうことだったり、IHIの歴史を知ってもらうことだったり。 切り離された業務に従事するのではなく、全体観を理解してもらうことで、自分の業務がどう会社の成長に貢献するかをよりリアルに感じてもらえるよう見直しをしています。
—— 教育制度の見直しを行うことで、何かいい影響は出ていますか?
宮田:まだまだだとは思いますが、少なからず胸を張れる結果も出始めています。 最近の例として、CAD(コンピュータを用いて設計をすること)経験のなかった障害者採用の社員が、スキルを磨いたことで、「ぜひ一緒に働きたい」と業務を委託されていた部署への異動が決まりました。
この異動を僕は「卒業」と呼んでいて、「適切なサポートと職場からの理解があれば、障害があっても、十分なパフォーマンスを発揮できる」という指針を証明するエピソードだったと思います。
—— 採用時から、全員が「卒業」することを目指しているんですよね?
宮田:おっしゃる通りです。まだまだ実績が少ないとはいえ、障害にとらわれず活躍する社員が増えてきている。卒業のシーンを見ると胸が熱くなりますし、卒業した社員が入社希望者に会社説明をしているシーンを見ると、心から嬉しくなります。
お互いを 知る機会 の数が、溝を埋める 鍵になる
—— IHIさんは障害者採用と成長支援を長きにわたって続け てこられてきていますが、それれらを通じて、障害者と健常 者が一 緒に働く上で大事なことはなんだと思いますか?
宮田:お互いをよく知ることだと思います。 健常者が障害のある方を理解するのはもちろん、障害のある方にも、健常者のことをよく知ってもらわないと、溝が解消されることはありません。
会社生活だけでなく、プライベートや通勤時間など、さまざまなシュチュエーションでどのような苦労があるのかを、お互いが理解する必要がある。 それができれば、お互いに適切な配慮ができるようになりますよね。
また、障害のある者同士で理解をすることも必須です。 たとえば、精神に障害のある者にとっては聴覚に障害のある者同士の口話が、雑音に聞こえてしまうケースがあります。 障害者と一口に言ってもその特性はさまざまであるので、とにかくお互いを知る機会をつくっていかなければいけないんです。
—— そうなんですね。健常者からすると、言えない視点もあると。
宮田:はい。なので、高度な専門性を持つ社員が業務をサポートすることには、大きな意味があったと思います。
制度の充実に力を入れ始めた2年前から今日までに、たくさんの視点を得ることができました。 他社事例を活かすこともでき始めており、今度は弊社からも、知見を発信していきたいと考えています。
—— 今後IHIとして、障害者雇用をする上で、より強化していきたいと考えていることはありますか?
宮田:引き続き教育制度を充実していくことはもちろん、採用の間口を広げていきたいと思っています。 現在採用できているのは、業務の関係上、限られた障害を持つ方のみです。 今後は障害に制限なく採用活動を実施できる体制を整え、多様性のある社会の実現に貢献していきたいと思っています。
これまでの実績を挙げると、障害者雇用で採用したメンバーの平均在籍年数は13年ほど。 非正規雇用の社員や、体調を鑑みて期間従業員となっている社員もいますが、そのどれもが正社員として働くことを目指して採用活動を続けてきた結果です。 今後も、障害にとらわれずに働き続けられる環境づくりを目指していきます。
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